1.余裕ぶっていた

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 時期が来れば彼はこのゲームのヒロインと出会い、攻略され、私は婚約破棄という結末を迎えるのだから。 「このゲームの悪役令嬢は辺境の修道院に送られたはず、なら悪くないわね」  あえて口に出し考えながら一人部屋を歩く。  王太子妃になるべく幼い頃から厳しく躾られ、友達を作ることも誰かと気楽に話すことなかったせいか、前世の記憶が甦る前から冷めた子供だった私は冷静にそう分析した。    殺される訳でないのなら尚更私にすることはなく、ただ優雅に落ち着きヒロインの登場を待てばいい。  相手が執着ヤンデレ激重男だということは少し同情するが、どうせ何もしなくてもゲームの強制力とやらで全て上手くいくだろう。  必要そうならばヒロインをいじめるくらいはしよう、それが二人の恋のスパイスになるならば――  そう、思っていたのに。 「あぁ、やっと君と結婚出来た。これで僕たちは名実ともに夫婦だよ、マリアナ」 「シルヴェストル殿下」 「そんな他人行儀に呼ばないでくれ。今日夫婦になったんだ、僕のことはシルと」 「し、シル様、その……」
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