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「実はあたしも一度だけ幽霊を見たことがあるの。それ以来、そういう記事や呟きに嵌っちゃって。【死者を捜し出せる美しすぎる姉妹】のことは【四丁目】で働く前から知ってたんだ」
麻里ちゃんが言った【死者を捜し出せる美しすぎる姉妹】というのは、ネット上で薫ちゃんと私につけられたあだ名だ。
麻里ちゃんも店で働くようになるまでは、薫ちゃんのことを女性だと勘違いしていたらしい。
「それで? 麻里ちゃんさんは玲美さんが何か問題を抱えていたことを知ってたんですか?」
「あたしの方が年下だから"麻里ちゃん"でいいわよ」
「え? 年下なの?」
「優香姉さんと一緒で、優さんは大学出てるんでしょ? あたしはまだハタチだから」
「ハタチ? 若ーい! しっかりしてるから絶対年上だと思った」
聞けば麻里ちゃんは高校を卒業してから職を転々としてきたそうで、社会人経験のない私から見ると年齢より大人びているのはそういうことかと納得した。
「玲美もあたしと同い年で、前は便利屋でバイトしてたって」
「便利屋……。もしかしてその仕事中に何か見てはいけないものを見てしまったとか?」
「じゃなくて、お客だった女の人と関係を持っちゃったみたい。それが人妻でさ」
「ええー⁉ 玲美さんってゲイじゃなくてバイ?」
私はビックリしてつい大声を出してしまったけど、麻里ちゃんが「ううん、ノーマルよ。あたしもそう」と言うので頭も身体もフリーズした。
「もしかして優さん、おかまバーで働いてるのはみんなゲイだと思ってた?」
「うん。違うの?」
「ゲイバーだったらそうだけど、うちのバーでゲイなのは友加里ママと優香姉さんぐらいよ」
「そうなの?」
「おかまバーは面白いトークとショーが楽しめるスナックみたいなところだから、お客さんも女性の方が多いのよ」
「知らなかった……」
長年勘違いをしていた自分が恥ずかしくなったけど、もう駅が目の前に見えてきたから、詳しいことは後で薫ちゃんに聞くことにしよう。
「麻里ちゃん、その人妻が誰なのかわかる?」
「そこまでは聞いてないけど……便利屋の場所なら知ってる」
玲美さんが働いていた便利屋は浜野辺の駅前にあるらしい。
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