極道の若頭だけどオメガバのある異世界に転生した上、駄犬と龍人族の王に求婚されている。

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 噛み癖あるのもキス魔なのも知ってたが、もし今世で会ったら殴ると心の中で誓う。啓介にイラっとしながら、口を開いた。 「この際だから言うけど、啓介とは付き合ってなかったぞ。似たようなポテンシャルだったからお互い溜まった時に性欲を発散してただけだ。好きとか思った事ねえよ。言われた事もないし、束縛された事もないからアイツも同じなんだろ」  好きだとか愛してるだとか、言葉を言われないし求められもしないから居心地良かっただけだ。  拓馬とも啓介とも、一緒に誰かと喧嘩してる時が一番楽しかったし、悪ふざけの延長線上で啓介に抱かれるのは抵抗なかった。  拓馬には自分のその少し後ろをついてきて欲しいと思ってしまうのは、この様子じゃ酷なんだろうなきっと……。苦笑する。 「じゃあ、おれは? 別に須藤さんと付き合ってなくて関係持ててたんなら、この世界での相手はおれでも良くないっすか?」 「いや、ムリだ」  キッパリと切り捨てる。 「何でっすか?」 「俺は自分に気持ちを向けてる奴とはヤらねえって決めてる。憧憬でも恋愛でもな。だからお前とは寝ない」 「本当にズルいっすね、あの人……」  舌打ちしたカイルが嫌そうに顔を顰めた。 「あの時だって、勝手に兄貴の体持ってったまま行方不明とか意味分かんねえっす。遺体なしの葬式になっちまったし、兄貴は仕方ないとして須藤さんもそのまま帰って来なくて大変だったんすよ」  唖然とする。  ——啓介が俺の体を持ったまま消えた? 何の為に?  また考えなければいけない事が増えて頭が痛くなった。それともう一つ。 「ちょっと待て。お前あん時死んでなかったのか? てっきり一緒に死んだから同時にここに転生したんだとばかり思ってたわ」  また質問に戻り、カイルを見つめる。 「出来れば一緒に心中したかったすーー! 兄貴が庇ってくれたお陰でおれは無事でした。おれが死んだのはその一年後くらいっす。組長も撃たれて、不知火会は壊滅状態にされました。その場にいたおれもその時撃たれたんす。この店の前で兄貴と出会ったとこから前世の記憶と繋がるんで、死んだのはそのタイミングじゃないっすかね? 因みにおれの親父の事気がついてました? 何故か前世よりムキムキになって、色黒で記憶もないけど、組長っすよ」 「ふあっ⁉︎」  妙な声が出た。瞬きもせずにカイルを見つめて、両肩を掴む。歓喜で両手がブルブルと震えた。 「カイルぅ……!」 「ほらほら~、おれんとこ嫁いできたら兄貴が憧れて止まなかった組長がもれなくついてくるっすよ? あの人前世なんて覚えてないくせに、中身はあの頃のまんまっす。おれのとこめっちゃいいでしょ? ねえ? ねえ? 兄貴が前向きに考えてくれるんなら、早速明日からにでも材料集めてラーメンの試作品も作りますけど?」  カイルの言葉に唸る。 「俺の……ラーメン」  途端にカイルが良い男に見え始めた。 「そっすよ。兄貴のラーメンす」 「カイルがイケメンに見えるとか……何の幻覚魔法だ」 「ちょ、酷くないっすか、それ! これでもおれ少しは人気あるんすよ!」 「ああ……残念なイケメンとして? 分かるわ」  心が揺れる。いや、こんな事に釣られちゃダメだろ。心の中の葛藤が物凄かった。  本気でいじけ始めたカイルの頭を撫でる。 「因みに何ラーメン?」 「豚骨塩味」  ——何その誘惑! 俺の一番好きな味おさえられた!  同じ名前でも、違った食材を使えばまた違った味の新しいラーメンが食べられるかもしれない。また腹が減ってきた。 「う、うううぅ~俺のラーメン……」  プラス、組長がいる。 「おれと結婚しましょ?」  唸りに唸って額をカイルの肩にグリグリと押し付けた。  ——こんにゃろ、人の弱みにつけ込みやがって!  顔を見なくてもニヤニヤしてるのが伝わってくる。 「ち、……クソが」 「そんな事言っていいんすか?」 「分かった………………考えとく。でもマジで恋愛感情向けられるの苦手だから、セックスん時に勃つかは分かんねえぞ」 「良いっすよ別に。慣れさせますから。それに勃たなくても後ろでイケるでしょ? うっし、これで一歩進んだっす!」  腕の中に抱きしめられる。  流れで口付けられそうになったので、唇との間に手を差し込んで止めた。 「ちっ」 「甘ぇよ」  フン、と鼻を鳴らして笑ってやった。  
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