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皆が高校へ入学したころ、彼女は"光の学園"を卒業することとなりました。
普通ならおめでとうなんだろうけど、妹の場合は違うんです。
もうこれ以上の改善は無理だって判断されたから。
久しぶりに煙草を吸っているお父さんを見たかな。
「一本だけ、一本だけ吸わせてくれ」ってお母さんに頼み込んでた。めっちゃ背中が小さく見えた。
二人泣いてた。
うちも無性に何かしたくなったから、コンビニ行って色んなお菓子を手当たり次第買って気を紛らした。
無駄遣いだから普段なら怒る母も、その日だけは何も言わなかった。
◇
お婆ちゃん、
私が大学生になった頃に、奇跡が起きたんだよ。
信じられなかった。
妹がね、初めて言葉を喋ったんです。
もちろん私達の様な話方では無いんですけどね。
彼女は言葉としてでなく、メロディーとしてそれを発しました。
何処かで聴いた音楽が彼女の言葉となったみたいです。
再生しますね。
あ~~り~~が~~と、お母~~さ~~ん~~
わ~~たしぃ~~、ん~~でくぅ~~れて~~
あ~~り~~が~~と、おとぅ~~さ~~ん~~
わ~~たしぃ~~、まもって~~くれーーて~~
あ~~り~~が~~と、お姉~~ちゃ~~ん~~
わ~~たしぃ~~にぃ~~やさぁ~~しくて~~
ばぁば、ばぁば、だいすけ〜〜
でもね、残念な事にこの子歌が終わるとね、またいつもの宇宙語に戻ってしまいます。
でも時折ね、ほんの気まぐれなのかもしれないけど、彼女は自分の想いをメロディーに乗せて語ることがあるんだよお婆ちゃん。
きっとこれからも普通に話す事は出来ないんだろうね恐らく。
けれどねっ、一番誰よりも想いをメロディーに乗せて歌うことができるんです。
ねえ、聴いてるお婆ちゃん?
また、来年も来ますね。
「じゃっ行こっか、あっ、それお供え物だから勝手に取っちゃ駄目」
「あーーーーうーーーー」
━━完━━
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