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妹は相変わらず喋れないけれど、ちゃんと泣いたり、笑ったりするんだよ。
喜怒哀楽って言うの?
それはあるみたい。
でも、今まで彼女からママやパパっていうさ、簡単な言葉すら聴いた事が無いんだよね。
私の場合はさっ、真っ先にママって言ったんだって。
でも、お婆ちゃんが言うにはママじゃなくって飯の方を言ってたって。
はっ、そんなはしたなくないってば。
妹の場合は言語野の一部の損傷が言葉を奪ったらしいです。
小さい頃は私も分からなかったんですね。
母からレントゲンを見せて貰ったんですけど、損傷部分は小さな点が見えたのを覚えてます。
改めて見せて貰いました。
点に見えるのは、無くなって穴になった部分みたい。
細胞が死んじゃったんだってさ。
ほんのほんの小さなドッド、爪楊枝の先っぽでも開けられないくらいにとても小さな穴、それだけで彼女は話す事ができないんだよ。
信じられる?
なんだろう、この気持ち。
自分のことじゃないのに、すっごくムカつくし悔しい。
こんなにマジ天使でさピュアなんだよこの子、なんで神様は彼女から声を奪ってしまったん。
「なんで? どうして? なんで? どうして?」
「彼女には何の罪もないじゃん、なんで?」
「お姉ちゃん」って彼女から聞きたかった、でもやっぱこれからもずっと無理なん……
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