第1章 彗星から来た少女

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第1章 彗星から来た少女

 マザー・コアによって管理されている都市。 通称、マザー・シティ。 俺の街はコンピューターが人間を管理している街だ。 まさか、この街がAIによってこんなに発展するとは思わなかった。  AIの普及により人は働かなくなり、夕飯の献立や仕事選びもAIが行っている。 なんでもかんでもAIに頼る。 それがこの街の現状だ。 だから、人は空を見なくなった。  俺は学校に行く日、たまたま空を見上げた。 雨が降っているとか、晴れているとかそんな理由じゃなく何か物音がした……そんな気がしたんだ。 蒼色の髪、青い瞳、細身の華奢(きゃしゃ)な身体の少女が空から落ちてきた。 少女はゆっくりと目を開けた。 「んんっ、ここは……」 「君は一体……」 俺の口を手で強く押さえて、颯爽(さっそう)と暗い路地へ行く。 「君はそこに隠れてて……」  そういうと、彼女は歌い出した。 とてもうっとりしそうなほどの綺麗な歌声だ。 こんなにも素敵な歌声なのに、なぜか彼女を追っていた敵が次々と倒れていく。 そして、敵を殲滅(せんめつ)させてから俺の元へとやって来た。 「あれ?君は私の歌で倒れないなんて珍しいね」 「君は一体何者なんだ?」 「何者かって?そんなの私が知りたいよ」 「それに君を追ってるやつらは何者なんだ?」 「ああ、そいつらは私を(まつ)り上げようとしてくる厄介な教団の連中だよ……」 教団の人間がこんな少女を複数人で襲っているのか? 彼女が俺に対して身体をくっつけてきた。 「それにしても、君って私の歌声に魅了されてたよね?私、住むところが無いんだ……。だからさ、君の家に住んでもいいかな?」 「えっ?駄目に決まってるじゃん」 「こんな可愛い子を危険に晒すの?それに君ってご両親不在で一人暮らしなんでしょ?」 「ど、どうしてそれを……」 「私、分かるんだ……。ふふっ、なんででしょ?」  不敵な笑みを浮かべて彼女は俺を見ている。 どうしてか分からないが、俺の個人情報は彼女に全て筒抜けなのかもしれない。 「なんでって、言われてもなぁ……。初対面で出会ったばっかだし……」 「それに私の秘密を見られたからには生きて返す訳にはいかないじゃん……」 「そ、そんな脅しには屈しないぞ……」 「いいのかな?」  彼女のポケットからナイフがちらつく。 なぜ、ナイフを持っているんだ……。 そして、そのナイフを彼女の指に当てた。 ナイフが彼女に刺さったが血は出なかった。 「嘘だよ。これ、普通のナイフじゃなくてマジック用のナイフだよ」  マジック用のナイフと知って、俺は安堵(あんど)の表情を漏らした。 「なんだよ……。ビックリしたじゃんか……。なんで、マジック用のナイフなんか持ってるんだ?」 「ああ、これね……。脅しの為の護身用のアイテムだよ……。これ見せたら、大抵は引っかかるんだけどね……」 「そうなんだ……」 「それより、一人暮らしなら住まわせてよ……。家事とかなんでもするからさ」 「あー、もう仕方ないなぁ……。一晩だけならいいよ」 「一晩だけ?まぁ、それでもいいや……」  彼女は何か考える素振りをすると、即座に(うなず)いた。 どうやら、彼女は良からぬ事を考えてるようだった。
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