勇者?従者?……って、ここは何処?

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勇者?従者?……って、ここは何処?

俺は、何処にでも居る普通の高校生だ。 成績は中の中で容姿は平凡。 スポーツも……普通。 クラスでは目立たず、休んでも気付かれない。 そう、いわゆるモブキャラって奴だ。 漫画やアニメのように、イケメンに生まれていたら人生ウハウハだったろうに……とは思うものの、うちの両親から美形が産まれたら奇跡だ。 容姿や頭脳は親で決まると誰かが言ってたが、まさにその通りだ。 ちなみに、平凡な俺の名前もまさに平凡の極み「多朗」だ。 え?苗字はどうなんだ? だと? それがな、鈴木や佐藤だったら最高なんだが、世の中そんなに甘くない。 話題にもならない「神代多朗」それが俺の名前だ。 これが「鈴木多朗」や「佐藤多朗」だったら、ネタにでもなるんだろうが、平凡でモブな俺の名前は話題にならない平凡さ……って奴だ。 神様って奴は、案外不平等に人間を作りやがる。 でもまぁ……最近は、平凡でモブが案外幸せなんだろうと思っている。 俺は平凡中の平凡で生涯を終える。 きっと平凡でモブな俺には、そんな俺にピッタリな平凡でモブな妻が出来るんだろう。 そう、それで良い。 モブな俺が美女なんかに好かれてみろ!! それこそ血の雨が降る。 良いんだよ、俺は平凡で……。 平凡バンザイってヤツだ。 そんな事を考えていると、グラリと地面が揺れた。 最近、地震が多いなぁ……。 これも地球温暖化の影響なんだろうな。 そんな事を考えていると 『ゆ……しゃ……ま』 何処からか声が聞こえる。 (なんだ?) 疑問に思いながらも、これが漫画やアニメなら異世界へ召喚されたりしちゃうんだろうなぁ~なんて考えて、一人ニヤニヤしてキョロキョロと周りを見ると 「神代~!」 リア充の和久井奏叶がキラッキラの笑顔で手を上げて走って来た。 学校一のイケメンで、成績優秀、スポーツ万能、しかもこんな俺にさえ優しい良い奴。 俺が立ち止まり 「なんだよ、和久井か……」 って呟くと、不思議そうな顔をして隣に並び 「今帰りか?」 と話し掛けて来た。 「まぁな。和久井は?」 「俺も今帰り。神代を見掛けたから声掛けたんだけど、迷惑だった?」 しゅんと、子犬みたいな顔で俺を見た。 こいつ、イケメンのクセにワンコ系で可愛いんだよなぁ……。 柔らかい薄茶色の髪の毛が、太陽の光でキラキラ輝いてイケメンに磨きが掛かる。 クソ!本当に神様は不公平だなって思いながら 「いや、別に」 と答えたその時だった。 「見つけた! 勇者様!!」 そう叫ばれた瞬間、凄い光に包まれて身体がフワリと浮いた。 「神代!!」 俺の腕を和久井が掴んだ瞬間、光の閃光で世界が真っ白になった。 ゆっくりと光が消えて辺りを見ると、見知らぬ人達に囲まれていた。 「おい、神代……此処って何処?」 こっそり俺に話し掛けた和久井を、一斉に俺達を囲って眺めていた人達が取り囲み 「勇者様!」 口々にそう言ってひれ伏した。 「神代……これ、何?」 困った顔をして話し掛けて来たせいで、俺の存在までバレちまった。 「おぉ! さすが勇者様。従者殿をお連れで召喚なされたなんて!」 なんだか分からないけど、ひれ伏してた人達が俺を見て盛り上がっている。 取り敢えず俺も笑顔で対応していると、しばらくしてかなり質素な部屋に俺だけが通された。 和久井は別の部屋に通されたらしく、今、何処に居るのか分からない。 ここが何処で、俺達はどうなるのかが不安だった。 知らない部屋に知らない世界。 いつ帰れるのか? 何故、平凡な俺が巻き込まれたのか? 分からない事だらけで頭を抱えていた。 すると和久井の奴が俺の部屋に来て 「神代、お前も俺の部屋で寝よう」 なんて言い出した。 俺が思わず 「何で一緒に寝なくちゃなんねぇんだよ!お前、もしかして……」 と叫ぶと 「こんな場所で神代を寝かせられないよ! とにかくおいで!」 そう言われて、ズルズルと引き摺られるように和久井の部屋に連れて来られた。 「待て! 俺はまだ童貞なのに、男で童貞喪失も処女喪失も遠慮したい!!」 「こんなに広い部屋に1人なんて申し訳無くて」 俺と和久井の言葉が重なる。 「え?」 「え?しょ……処女? 童貞?」 驚いて見つめ合うと、和久井が大爆笑し始めた。
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