──拓斗の感謝の手紙──

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──拓斗の感謝の手紙──

「今まで何度も感謝の言葉を伝えてきたと思うけど、言葉を手紙に残すのは初めてです。今ままでいろんなことがありましたね。大事に育ててくれたこと。感謝しかありません。小さい頃はすぐ母さんの膝の上に座ったりして甘えさせてもらいました。大きくなり思春期になって反抗したりしました。そんな時、父さんが天国に旅立って尚更。その時は辛かったと思います。父さんがいなくなって本当の意味で頼る人を失い、それでも子供のために懸命になったあなたの姿。今、思えば迷惑しかかけていないような気がします。それでも温かく私を、家族を包んでくれました。  あれから母さんは強くなったと思います。父さんが亡くなってから母さんは働いたり運転免許を取ったり資格を年を取ってから取ったり。そんな母さんは私の誇りです。母さんありがとう。これからもよろしくお願いします。  それと、ここにはいない父さんにも感謝の言葉を述べたいと思います。あなたはいつも家族のことを思っていてくれました。今でも亡くなる前、私を『たぁ君』と呼んで手を握ってくれたことあの声、温もりを忘れません。あなたがいなければ私はここまで来ることもなかったでしょう。  僕が生まれる時、お父さんは周りが反対する中、一人僕を守ってくれました。母さんのつわりが酷くて本当に酷くて命が危なくて。周りはすべて僕を産むことを反対して。でもあなただけは、父さんだけは僕を守ってくれた。母さんを殺しかけたのに。普通生死をさ迷ってる人言えないです。でもあなたは違った。母さんに『死んでも産め』なんて。僕はその一言で産まれることが出来た。だから美郷と巡り会うことができた。これから父さんのように美郷を守っていきたいと思います。だからあの時、言えなかった言葉を言わせてください。ありがとう。本当にありがとう。これからも二人を、そして家族を見守っていてください。  母さん、これからも親孝行させてね。家族が一人増えましたが二人共々よろしくお願いします。拓斗」  拓斗の目は涙で溢れている。そっと美郷はハンカチで拓斗の目から溢れるものを拭き取って、へへへと笑った。
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