──黒木光明の来賓の言葉──

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──黒木光明の来賓の言葉──

「今、ご紹介に預かりました黒木と申します。この度は拓斗君、美郷さんご結婚おめでとうございます。二人のご結婚は拓斗君の亡き父、博之さんも天国から大変喜んでいらっしゃると思います。実は私は拓斗君の父、博之さんと一緒に仕事をしていた間柄でございます。博之さんと言うと大変おこがましくうまく話せそうにないので当時私が呼んでいた呼び名で呼ばせてもらいます。本部長からは大変良く可愛がって頂いたからこそ今の私があると思っています。本部長の思いを胸に今も共に働いた会社で勤めあげておりますが、本部長との想い出で特に思い出されるのが拓斗君が生まれた日のことです。今でも思い出されます。  生まれた翌日出社されましたが、あの時のオフィスに入って来られた満面の笑みは今でも忘れられません。生まれるまでの苦労話も少しご本人から聞いております。そしてことある度に拓斗君のことを聞かされました。言葉をしゃべった。寝返りした。立ちあがったなど。だから私は拓斗君がどのように幼少期過ごして来たか耳にたこが出来るほど聞かされています。どれだけ愛されていたか良く分かりました。  途中半ばで亡くなられ残念ではありますが、多分誰よりも天国から喜んで二人を祝福されていらっしゃるのではないでしょうか? 〈中略〉  この家族の絆はどこよりも素晴らしいものがあります。それを象徴するのがご自宅のあの庭です。神崎家の庭は大変素晴らしく花が咲き誇っています。ある時本部長がおっしゃいました。この庭に、この家にいつも帰って来たくなるだろうと。私はそうだと思いました。美郷さん、あの家は温かさに溢れています。その中に美郷さんも入るということはものすごく喜ばしいことです。今日拓斗君、美郷さんがお互いを見る優しい目はあの温かさを引き継いでいくんだなと思います。そしてその思いを誰よりも受けてらっしゃるお義母様、清海さんもいらっしゃる。あの帰りたくなる場所をいつまでもいつまでも育ててください。それが何よりも本部長が望まれていることだと思います。本日は誠におめでとうございます。拓斗君、美郷さん、末永くお幸せに。この言葉を持って私の挨拶と代えさせて頂きます」  深々と黒木は頭を下げた。一瞬、博之がいたような感覚になった。  ──やっぱり、来てるんですか? 本部長──
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