20人が本棚に入れています
本棚に追加
好みの相手はすぐに見つかった。これは運命なんじゃないか?
「じゃあやってくる」
信号待ちしている相手の近くを位置取る。充はターゲットの真後ろで信号待ちしていた。何で俺より近付いてるんだ? でも、イケメン2人が並ぶと目の保養だな。
信号が青になり、速足でターゲットの前を歩く。横断歩道を渡り切ったところでハンカチを落とした。肩をトントンと叩かれる。きた! と高鳴る心臓。
「すみません、ハンカチ落としましたよ」
低く落ち着いた声は想像通り。振り返って相手と視線が交わり、身体を硬直させる。ハンカチを差し出して爽やかに笑っているのは充だった。期待しちゃうから声変えるな!
「またお前かよ!」
「だって夏樹の狙ってた相手、気付かずにハンカチ踏んであっち行っちゃったし」
充が指した方に目を向ければ、綺麗な人に腕を組まれて笑っている好みの男がいた。あんなにイケメンなら相手いるよな、と肩を落とす。
充は踏まれて汚れた箇所をはたいてくれた。ありがとう、と受け取る。
「何でハンカチ落としたの気付いてくれなかったんだろ」
「近すぎたんだと思う。夏樹は相手の目の前を歩いていたから」
ハンカチを落とす時の相手との距離も考慮しなければならなかったようだ。恋愛フラグを立てるのは意外と難しい。
「喉乾いたから自販機行ってくる」
「俺も行く」
デニッシュ食パンを食べてから何も飲んでいないから、口の中は乾いている。
財布を出して迷っている充に人がぶつかった。すみません、と軽く謝って相手は足早にいってしまう。充はぶつかった拍子に財布を落として、小銭をぶちまけた。
しゃがんで拾うのを手伝い、最後の1枚に手を伸ばすと充の手が触れた。隣に目を向けると充がキョトンとしてこちらを見ている。
……これもよくある恋愛フラグだよな。
「わざと小銭落として拾わせた?」
「違う、本当に偶然。人がぶつかってきて反動で落とした。タイミングよく手が触れて俺も驚いてる」
なんでコレはヤラセなしでできるんだよ。相手、充だけど。
ドリンクを買って並んでベンチに腰掛けた。
恋人が欲しいと思っていたけど、まず出会うのが難しすぎる。ペットボトルの蓋を開けて渇いた喉を潤した。
最初のコメントを投稿しよう!