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幼なじみ
征司とは幼馴染だった。同じ幼稚園に通い、仲が良かった。
小学生になった時、同じクラスになった。さらに偶然の上乗せで、隣同士の席になった。良かったと思った。私はそんなに引っ込み思案な性格ではなかったけれど、新しい環境はやっぱり不安だった。だから、征司がいてとても安心だった。
活発な性格の征司は、あっという間にクラスのみんなと仲良くなった。置いていかれたようで寂しいと思ったのもつかの間、私にも仲良しの友達ができた。おかげで、最初の頃の不安はどこへ行ってしまったのか、毎日学校に行くのが楽しかった。
学校が終わるとたいていは、私と征司を含む同じ方向に家がある何人かと一緒に帰った。
途中で他のみんなと別れた後は、征司と二人きりになるのが常だった。そうすると、征司はいつもおずおずと私の手を取って、ほんの少しだけ遠回りをして近くの公園の中を通って家に向かった。
どうしてわざわざ手をつなぐんだろう――。
ふと疑問に思った私は、ある時征司に訊ねた。
そうしたら、征司はなぜか唇を尖らせ、ほんの少しだけ顔をそむけてこう言った。
―― みちえちゃんって、なんだか危なっかしくて放っておけないんだよね。守ってあげなきゃ、っていう気持ちになっちゃうんだ。
私はきょとんとした。そんな風に言われたことが初めてで、どんな言葉を返したらいいか分からなかったのだ。
まだ恋というものを知らなかったけれど、急に征司が知らない男の子のように見えた。この時まではなんとも思っていなかったのに、つないだその手に胸がどきどきし始めた。
私は困った。このどきどきは、どうやったら静かになるのだろうと考えた。征司の顔を見るのが恥ずかしくなった。どこを見たらいいのか迷った。
私は征司と手をつないだまま公園の緑の上を歩いていたが、ふと、白くて丸い可愛い花が目の端に飛び込んできた。
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