私が死んだ日

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私が死んだ日

それは……何度も通った道である。 いや、でもちょっと待って。 何でっ!? 普通こう言うのって……こう言うのってさぁ。 もうちょっと夢があったっていいじゃないの。 例えば、明らかにヒロインちゃんな【男爵令嬢】を虐めぬいた悪役令嬢が婚約者の【クソ王太子】を攻略。その後すかさず【クソ王太子】が悪役令嬢に婚約破棄を告げ、悪役令嬢、処刑。 それから他には、あからさまな転生者っぽいお花畑ヒロインちゃんにしてやられて、婚約者の【クソ王太子】が逆上して斬りかかってきて命を落としたり。 あぁ、あと、悪役令嬢に平民の異母妹がいるってのもテンプレじゃない? そして私を悪役令嬢に仕立てて断罪して、私が処刑されるとか。 こういう!もっと!オーソドックスなのがあるはずでしょうが……!! だけれど現実は小説よりも奇なり。奇なりだとは思うけども。奇すぎるわ!! 私は6回死んで、5回死に戻った。 覚えてる1回目の死は前世、地球を宇宙の侵略から守るために身体を張って仲間を庇い哀れにも散った……いや違うううぅっ!!!ごめんなさい、ウソつきました。地球と言う国でごくごく平凡な日本人。地球は別に、宇宙から侵略はされておりません!! 私は日々乙女ゲームが好き好きと言いながら乙女ゲームをプレイしたことのない、乙女ゲーム系小説、悪役令嬢もの、死に戻り系が大好きだった、肝心なものをプレイしてないオタクであった。 しかも孫ひ孫に囲まれ大往生であった。 だからね、この世界が例え乙女ゲームの世界だと言われても、私分かんないわけ。 そして転生し、一度目にこの世界で死んで、死に戻った2回目に前世地球を宇宙からの侵略から守ることもできなく哀れに散ったことを思い出したの。違った、間違った。大往生したことを思い出したの。 そうしてこの世界で死んで戻ったの5回目、さらに5回死んで、全くクリア出来なくて死に戻ったの6回目。 ――――また、振り出しに戻ったか。 死んでも死んでも戻されるループ。それが少しくらいまともであったのなら、私はまだ納得できた。原作知らないけど乙女ゲームの異世界ね!きゃー!攻略して見せるたるわあぁぁっ!……と、思えたかもしれないわけ。 でも、無理でした。 「あぁ……リオ……」 そう、ふと呟き目を開ければ。 「お帰り、ばあちゃん」 目の前で困ったように微笑む孫……正確には前々々々……いや分からない!々を数えるのめんどぉっ!! 地球で大往生した時の孫の生まれ変わりがそこにはいた。 「ただいま、また死に戻ったみたい」 「へぇー……みたいだね。ばあちゃんも大変だね」 「んな他人事みたいに」 「だってこの世界じゃ他人じゃん」 それはそうだけど。 でも、今回も孫は私のことを覚えていたらしい。何せ、この孫も死に戻り組なのだ。それも私の死によって巻き戻される。 「それで……あんたはまた仕事中か」 しかも毎回この孫の仕事中に戻されるんだよな。1回目の死に戻りーーつまりは2回目で、卒倒仕掛けた。1回目の初対面では卒倒する余裕はなかったけどねぇ。 だって殺されるのかと思うじゃん!!でも2回目の対面で不意に口をついてでた言葉が、彼の心を動かした。彼もまた、私のことを覚えていたのだ。 正確には、地球を共に宇宙の脅威から守って戦っていた……あの頃の記憶を。そう、彼もまた、地球からの転生者だったのだ。 ――――いや、ちが――――――うっ!んなわけあるかい!!てかその設定だと私、多分ひ孫の顔拝めてないわぁっ!!! まぁ、ぶっちゃけ言うと、日本にいた頃私と彼は、ばあちゃんと孫だった。しかもおばあちゃん子である。とってもかわいいよね。 孫は12歳。私はいつも通りならば多分7歳か。 12歳のくせに、手を真っ赤に染めながらたっのしそぉ~~に拷問中であった孫は、さっきまで恐怖の笑みを浮かべていたと言うのに、今はおばあちゃん子だった頃の人懐こい笑みを浮かべている。ああぁ、孫かわいーいっ!この世界でも黒髪黒目!しかもイケメンに成長してるトコは変わんないけど、やっぱ孫だから。孫だから、イケメンだろうがなかろうが、全てがかわいいのよね。 ――――頭から明らかにヒトじゃない角生えててもな……!ほーんと立派ないかにもーな金色の魔王みたいなお角~~! ……おじいさん、私……。銀髪は白髪に近いかなぁ。それでもサファイアブルーの瞳なんて大層な外見で転生したけれど。異世界でどんなに死に戻っても、かわいい孫に出会えて幸せよ。 「あ、急いで片付けないと」 孫はさっきまで拷問していた人間だったものたちをせっせと片付けていく。この孫、記憶を覚えてるのはいいのだけど、前世の記憶と死に戻り前の記憶を思い出すのはいつもこのタイミングなのだ。
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