愛はいつだって命懸け

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愛はいつだって命懸け

「……これで何度目か」 「おじいさん」 「いいんだ、お前は、覚えてなくていい。次目覚める時は……絶対に……世界を、終わらせない」 ※※※ いや、待って。今のどんな世界観よ。今までとちょっと違うのだけど?脳裏に降ってきた私の妄想力にセルフツッコミサービスよ。 いや……でもこれって本当に私のただの妄想なのかしら……?何か妙にリアルだった気が……いやいや、まさか。 ーーと、その時。 「おばあちゃん!見て!」 「光だわ!」 洞窟の中……と言っても、ゲームのRPGよろしく、いい感じの松明が灯っており、足場は問題なく、私たちはリオたちの案内のもと出口と思われる場所を見つけた。 ここに松明が備えられている以上、ここを、この時のために抜け道として管理してきたってことよね。 「うん、本来は通れないと見せかけるために罠や仕掛けも揃えていて、出口も分からなくしてるんだけど」 と、リオ。そりゃぁそうよね。じゃなきゃ簡単に攻めいられる。 「今日は特別。外に仲間が待ってる」 仲間、ね。 辺境伯領側の協力者たち。リオとグレンによって、辺境伯領側の扉が開かれる。 その向こうへと足を踏み出せば。予想通りの魔族たち。……それから。 彼らは。 「私のルーツだね」 ヒナの……。と、言うことは、彼らは。 「彼らも協力者なのね」 「そうだよ。戦争になれば一番の被害者になるのは、彼らだ」 リオも頷く。だからこそ。 「力のない女子どもは大半は救出している。だが兵士として囚われたものたちは、戦場だ」 「……どうするの?」 「彼らはもう、自由なんだ」 「それは……」 「既に奴隷の証は、意味のないものに成り果てている。しかし今反旗を翻しても、帝国側がどうでるかは分からない」 と、グレン。争いの原因は国境で分かたれた同じ民族。でも彼らがそもそもの戦争の火種とは限らない。 そして彼らが辺境伯を見限ったとしても、彼らの自由が保証されるわけではない。 帝国が攻めて来た理由が、彼らではなかったとしたら……。 捕虜とされてどんな目に遭うか。そもそも捕虜どころか全滅させられる可能性だってある。 「じゃぁ、どうすれば……」 「まず、目的地は辺境伯城だ」 リオの言葉に、周りの魔族たちも、頷いている。 「辺境伯をどうするの?」 「辺境伯から辺境を預かる地位全てを奪い取る」 「でも辺境伯を命じたのは国王よ?それを奪い取れるのは国王だけ」 「なら新しい王になればいい」 「……はい?」 「一応魔王は経験済みだからね」 「あんた、また魔王とか……っ」 「安心して、ばあちゃん。今度は、平和を作るための魔王になるから。実は避難の時にやり取りした領主たちとも事前に打ち合わせ済みだから」 「は、はい……?」 「みんな、見限るつもりだよ、この国を」 まぁ、分からなくもない……けど。 「本気?」 「うん。だからばあちゃんもついてきて。絶対、じいちゃんを取り戻そう」 「……うん、でも、あんたたちの命も最優先なの!それだけは覚えておいて」 私は、おじいさんのために命をかける……けど、孫たちには、幸せに生きて欲しいのよ。 今度こそ……終わらない世界で、幸せに。 「おばあちゃんもだよ」 ヒナが不意に手を握ってくる。私の考え、見透かされちゃったかしら……。 「みんなで生き延びる。帝国は……どう動くかはわからない。でもできるだけ……被害を抑えられるように、交渉する」 リオの力強い頷きは……やはり王を務めたから故の強さだろうか。 「でも、辺境伯城へ行くにしても、やっぱりひっそり行くのよね。どう行けば……」 「もう手はずは済んでいるよ」 「リオ……?それって……」 孫が優秀すぎておばあちゃん、胸がドキドキしてきた。 「ばあちゃん、ずっと不思議じゃなかった?俺とばあちゃんの出会いだよ」 「あぁ……確かに?てかアンタ、何であんなとこにいたのよ」 「辺境伯の命令だよ」 「……はい?」 「俺は、子どもの頃辺境伯に飼われてた」 「か、かわ……っ」 「そうでもなきゃ、人間でも魔族でもない俺の居場所なんて存在しない。まぁ、魔族の王にはなったけど……あの辺境伯はさ……多分、ばあちゃんが考えてる以上に、罪深い……俺や、俺が始末したやつを使って、あの公爵が前妻の娘を始末させようとしたんだ」 つまりは……私。あれは、そう言うことだったの。通りで娘が、前妻の娘とは言え私が拐われても助けにも来ない、死んだであろうことを見計らっていつも、あの場にのこのことやってきていたのか……。 「あれ、じゃぁリオはどうしていつも助けてくれたの……?」 リオの話でも、私の記憶でも、もうひとり、私を狙ったものがいた。誘拐、殺害未遂の実行犯がいたはず。 「ほんと、分かんないけどさ……でも、きっと知ってたのかもな、魂が」 私のことを……?不思議な、縁ね。そうでもして、何度も何度も出会って、それでも変えられなかった死に戻りのループ。 「魔王だった時もあいつは殺した」 ……て、辺境伯のこと。 最低な男だとはいえ……。やっぱり、リオが誰かに手をかけるのは……辛いわね。戦争だって、分かってるの。分かってるけど……それでも、孫の手が血に染まるなんて……悲しいことには変わりないの。 「今回は……姿を眩ました俺が、辺境伯とコンタクトをとった。帝国に攻められて、魔物血が流れた手でも欲しいはずだ。あいつは、ノッてきた」 そこまでして……あのクソ辺境伯はリオたちを使おうとする。 「作戦には俺とグレンが行くから」 「リオ」 「ばあちゃん?」 「私も行く。そしてあの辺境伯にトドメをさすのは、私よ!」 「いや、ちょ、ばあちゃん何言ってるの!?」 「さすがにひいばあちゃんには……」 「おだまり!こう言うのはね……」 本来なら親……と言いたいところだけど。うちにはぼんくら息子しかいなかったから。 「ばあちゃんに任せなさい!だてに長く何回も生きてるわけじゃないのよ!」 『それ……俺らもだけど』 まぁ、確かにループは一緒にたくさんしたけども。 「分かったよ。俺と、グレンとばあちゃんが向かう。ヒナとユサ、アーシャとシャーシャはこちらを頼む」 この砦は無事とは言え……帝国軍の矛先が向かないとは言えない。 「あんたたちも、ちゃんと生き延びるのよ」 「うん……!おばあちゃん!ヒロイン魂、見せるから!」 ヒナと手を握りあい、頷く。 ――――さて、ある意味最重要決戦の場へ……っ!
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