おばあちゃんと孫

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おばあちゃんと孫

――――時は金なり。でもループしすぎじゃない?一体どんだけ稼げるのよ。でも急げ。じゃないと……。 「早くしないと第六転不倫オヤジが来るわよ、リオ!」 「あははは、ばあちゃんそれ、すっごく弱そう」 実際弱いだろうな……!1回目の異世界順風満帆生活では真っ先に孫によって殺されてたかんな!てか、リオも覚えてるのに、嬉々として語るんじゃないの! まぁいいけども。私もあの不倫オヤジは嫌いである。娘の私なんて、政略で無理やり結婚させられた母そっくりで嫌ってるし。不倫したのもそれが原因。あの不倫オヤジには、母以外に思い合ってた男爵令嬢の女がいたそうなのだ。 母は私が3歳の時にお星さまになったから、それ以来……いや結婚してからもずっと男爵令嬢と浮気をしていたのは知ってる。何度も生きてりゃ知る機会もあるってもの。 リオは渋っているが、不審に思われたら困る。吐きそうになりつつも、こちとら長く生きてきたおばあちゃん。何より孫が傷付くのは見たくない。まぁ、孫も強いから丈夫だけども、あのオヤジは自身のプライドと、手柄目当てに大軍を率いてくるのだ。 ――――私はおばあちゃん(※7歳です)!孫を守るのはおばあちゃんの責務よ!! リオと同じように、そこら辺に飛び散った血を身体や服にべったりと付けていく。 するとドタドタと大軍が迫る音が響く。 「さぁ、リオ!」 リオを守るため、腕を広げれば。リオは地球にいた頃のような満面の笑みでにっこりと笑う。 「ばあちゃん!」 リオが私の胸に飛び込み、ぎゅっと抱き付いた時だった。 「見付けたぞ!」 大軍を率いてきたオヤジ……公爵がにやりと笑う。娘の私のことなんて、つゆほども気にかけないくせに。私をさらった魔族を部下に仕留めさせて、功績とするつもりなのだ。 そもそも娘に護衛もつけずにはい拐ってくださいとばかりに差し出したのはこのオヤジ。ほんっとクズ!! 「いたぞ!魔族だ!」 公爵はリオを叫ぶと、始末しろとばかりに叫ぶ。 リオはこんなに小さいのに……。いや、子どもだけどもこの子は、人間など片手で捻るように殺せるんだが。しかし、おばあちゃんとしては、孫に人殺しはさせたくないし、孫が誰かを傷付けるのは最小限に抑えたい。 1回目では私に攻撃したリオ。私は右ほほから左胸にかけて傷を負い、王太子の婚約者だった私を、王太子も避け、醜いとなじった。その上、王太子は美人なコを見つけて私を断罪、処刑するかと思えば拷問した挙げ句ゴブリンの群れに放り投げ入れた。 ……ゴブリンたちの方が親切だった。さすがに強姦はしねぇって言ってたし。 弱りきって死に行く私を、死ぬまでせっせと看病してくれたのだ。死んだ後の身体は好きにしていいと言ったら、私の考えてるようなことはしない、土に埋めて弔うと言ってくれた。 しかし死に戻った2回目何よりも悲しかったのは……私を傷付け、命からがら逃げ去ったリオは、その後魔王として目覚め、王国と戦争を起こしたのだ。 因みにリオに相対しようと部下を盾にして名ばかりの将として進軍した公爵は真っ先にリオに殺されたが。公爵のことはどうでもいい。 公爵と不倫相手の娘が王太子を攻略しようとしてほんまもんのほかの公爵令嬢に完敗して社交界でつまはじきにされたのもどうでもいい。 ――――私はリオに、戦争なんて起こして欲しくなかったのだ。 だから2回目は記憶を取り戻したリオと生き延びようとした。けれど怪しまれてリオは怪我を負いながら逃げることになる。 孫に怪我をして欲しいばあちゃんなんているものか!! 私は、リオが怪我をしない、そして戦争を起こさない未来を作るのだ!! そして3回目からとったのが、これ。あと、3回目からは新たな味方ができたのだ。 「この子も私と同じく、捕まっていたの!この子だって被害者だわ!!」 私は叫んだ。すると公爵は顔を赤くして憤怒する。 「何を言っているのだ!!お前は公爵令嬢だと言う自覚がないのか!!」 娘だとも思っていないくせに……。 だけど、私には孫がいる……!孫は私が守るのよ!! 「この子は私が召し使いとして雇うわ!!」 「そんなことは認めないぞ!!魔族だろ!」 ふんぞり返る公爵だが。 なら、私に侍女や騎士くらいつけたらどうなのだ。この公爵はただ私を公爵邸の離れで冷遇するだけ。使用人も必要な時にしか来ない。1回目は不自由すぎたけれど、でも2回目からはおばあちゃん魂で何とかしてきた! そして3回目からはリオも側にいて、もっと味方が増えた。 「見た限り、この子は半魔族かと」 そう冷静に告げた人物に、公爵が息を飲む。さすがの公爵も、【彼】には強く出られない。何せ公爵は弱い。鍛えようともしない。だからこそ国でも指折りの実力者である彼には従わざるを得ない。 そんな公爵がどうして1回目ですんなり死んだかと言えば……彼が魔王側に寝返ったからだ。 リオも半魔族ならば、彼も半魔族。魔族の血を半分だけ受け継ぐがゆえにそれだけ強く、そして力だけを求められ、人間に卑下されながら生かされる。 だから彼もまた、魔王に寝返り、共に人間に戦争を起こした。 しかし、3回目からは彼も、私が死に戻った瞬間に記憶を取り戻したのだ。私と過ごした、日本での記憶を……!
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