孫もひ孫も

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孫もひ孫も

――――2XYZ年。地球は宇宙からの脅威にさらされていた。 宇宙からの侵略により多くの地球人が連れ去られ、日本人もその標的からは逃れられなかった。 孫である富士見リオはその日、目の前で弟のレンをUFOによって連れ去られた。 その日以来、リオは笑顔を失った。私はそんなリオのために。リオが道を踏み外さないように、共に地球義勇軍に身を投じた。 そして再会したレンは……レンは宇宙人によって改造され、私たちと殺し合う運命しか残されていなかった……。 さらにレンを倒さなければ地球は……地球は滅びてしまう……そんな…… そんな悲しい未来にはおばあちゃん、絶対させないわ!! いや、今の全部ウソだけどね!! 「グレン」 私は今のレンの名前を呼ぶ。2回目までは決して呼ぶことのなかった、できなかった名前。赤髪に赤目、角はないけれど半魔の19歳の騎士。 グレンの冷たい視線に、公爵は身震いする。 「か、勝手にしろ!!その代わり、後始末はお前がしろ!!」 そして逃げるように去っていく。 「何をしているお前ら!!わしを守らないか!!」 横柄に叫ぶ公爵にほかの騎士たちが続く。まぁ、後片付けならリオが大体しちゃったからいいのだけど。そしてその場に私たち3人だけになれば。 「あぁ……、ばあちゃん!会いたかった!!」 グレンが冷えきったような無表情から一気に破顔し、私に抱き付いた。うむ、やはり孫はかわいいなぁ。 「レン、ばあちゃんを独占するなって」 しかもリオったらぁ~~。おばあちゃんをとられてむくれちゃって。 本当に2人ともおばあちゃん子なんだからぁ~~。かわいいなぁ。よしよししようとすれば不意にグレンの身体が離れる。 「さて、まずは血を落とさないとね」 優しく微笑んでくれるレン。孫がイケメンすぎて困るんだけどおぉぉ。 「もちろんだ。ばあちゃんが風邪を引いたらこまる」 リオまで……!おばあちゃん子なところがかわいい!やっぱり孫はかわいい!孫は守るべきもの!! 心の中でガッツポーズを決めつつも、グレンがひょいっと私を抱き上げる。 やはり19歳。7歳の身体のおばあちゃんを抱き上げるのは余裕らしい。 そうしてグレンに連れられて、私が拐われた洞穴を出れば、近くの川でリオと血を落とす。離れには風呂がないからね。 ひととおり血を落とせば、騎士団の持ち物の一部なのか、グレンがローブを私たちにかけてくれる。大人用だから、大きめだけど。リオは魔法を使って自分で丈を短くしていたけれど、私はそのままグレンに抱き上げられた。 「さて、今回で6回目か」 「そうね」 グレンの言葉に頷く私。思えば6回目かぁ~~。 「屋敷に戻る?」 「屋敷はもういいわ」 散々やったけども、あの屋敷は変わらなかった。そろそろ公爵が愛人とその娘を迎える頃ね。最初は私が傷を負って使い物にならない、王太子に捨てられる前にすげ替えようと迎えたのだっけ。私の顔の傷を見たら、愛人たちを迎えたことを非難したほかの貴族も、母方の親族も納得してたわね。 ――――母方の、母の両親。おじいちゃんおばあちゃんまでね。私なら……孫にそんなことするかぁっ!!孫がどんな傷を負ってようが守る!溺愛する!それがおばあちゃんよ!! 例え愛人の子が聖魔力を持ってて、私に使えば傷が治ったのに公爵がケチったからと言って。 愛人の子以上の聖魔力の使い手にせがむのはほかの公爵家に隙を見せるからといって公爵がケチったからと言って。 因みに、その愛人の子以上と言うのは王太子と浮気してくっついたほかの公爵令嬢ね。確か聖女になったはず。 あの場所で踠いたからといって、何も変わらなかったのだもの。 「ゴブリンの巣に行きましょう」 「いいよ」 「いこうか」 グレンとリオも快諾する。まぁ、人間はゴブリンを怖がるし、忌まわしいと見なすけれど、リオは半魔な上に多くの魔族を従えるカリスマ性を持っているし、グレンもまた、リオの元で忠臣と呼ばれた騎士。魔物を恐れることも、忌むこともないのである。 ――――それにあそこには、会いたい子がいるのよ。 そうしてグレンに抱っこしてもらいながら辿り着いた場所には。 「おーい、ひいばあちゃ――――――――――ん!!」 元気にこちらへ駆けてくるのは。 「ユサ!」 私が大きく手を振れば、ぱあぁぁぁっと顔を輝かせる。その身長はグレンよりも大きく190センチほど。 「相変わらず大きいのねー」 「もちろん!ばあちゃんのためにはずっとキングでいるって決めたんだ!」 ニカッと笑う歯がピッカピカ真っ白!! 白い髪に瞳孔が縦長な金色の瞳。ゴブリンらしい緑の肌に半裸。あと、イケメン。ゴブリンっぽさなんて緑の肌くらいじゃないか?と思うが彼は本当にゴブリン。正確にはキングゴブリン。彼のほかのゴブリンたちはちゃんとちっちゃいかわいらしいゴブリン。 1回目は、私が死んだら埋めてくれると言っていたけれど、彼が埋める前に私の死とともに巻き戻ってしまった。彼が記憶を取り戻したのは4回目で。 彼に1回目のお礼が言いたくて、何とか巣を探して再会した途端、涙を流してばあちゃんと呼んでくれたものだ。あぁ、やっぱり孫もひ孫も……何回目でもかわいいねぇ。
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