じゃじゃ馬でも孫娘

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じゃじゃ馬でも孫娘

ユサの元で世話になりつつ驚いたのは。 「へぇ、人間たちとうまくやってるんだねぇ」 「そうだよ。いろいろあったけど、今では害獣退治とか、魔獣退治も請け負ってる」 ユサが満足そうに頷く。 私の記憶を取り戻したユサは、私に会うためにはまず人間と仲良くなろうとしたのだ。いきなり私に会いに王都入りすれば、魔物が王都を攻めたことになってしまうから。 そして私に会うために頑張っているユサは、コツをつかんだのか、前回よりも親密な関係を築いているようだ。 そのお陰か、女の子用の服ももらえた。リオももちろん服をゲットできた。最初はまさかのユサがついに人間を……!?っと、疑われてしまったのだが、ユサが私をひいおばあちゃんだと紹介したことでみんな納得したらしい。 ――――いや、何でえぇぇっ!?確かにサイズはゴブリンよりもちょっと小さいですけど!?ゴブリンおばあちゃんとして納得したってことなの!?でもまぁしかし……。 「おばあちゃん!」 町娘風の服に身を包んだかれんな少女がこちらに来てくれる。肌は緑で、人間で言えば12歳くらい。肌の色からも分かるが、つまりはゴブリン。ゴブリンの中でもプリンセスと呼ばれる存在で、美人の素質がもう見てとれる。ゴブリンは♂だけだと言われるけれど、キングが番うとまれに娘が生まれるのだ。 それがゴブリンのプリンセスとなる。 つまり……ユサの娘であり、ユサは妻帯者。ユサの妻はまさかの元町娘の人間アーシャで、こちらで一緒に暮らしており、プリンセスのやしゃごと共に来てくれた。やしゃごは母の影響か、半裸ではなく町娘の格好をしているなで……ユサのひいおばあちゃんの私の服も変に思われなかったのかな……町のみんなが優秀すぎて困るんだけど。 いやでもしかし、ひ孫にひ孫の嫁、さらにはやしゃごまでできておばあちゃん、幸せだよー。やしゃごは私のこと、おばあちゃんって呼ぶけどねぇ。ユサはひいおばあちゃんって呼んでるのに。 そして私も人間の7歳なのに、ひいおばあちゃんと呼んでくれるひ孫の嫁、優秀すぎ。ほんと町の人間たち、優秀すぎ。 「おばあちゃん、編み物教えて!」 やしゃごのシャーシャは最近、お裁縫系に目覚めたらしい。刺繍も編み物も喜んで習ってくれる姿に、アーシャも微笑ましそうに見守っている。 「じゃぁ一緒にやろうかね」 「わーい!」 孫もひ孫もかわいいが。やしゃごもかわいい。さらには、やしゃごの、娘!女の子!女の子って、たっのし~~いっ!!! そう言えば……地球にいた頃……。 『おばあちゃん!お願い、無茶をしないで……!』 宇宙出撃の朝、そう言って御守りを持たせてくれた孫娘も、この世界に転生していたりするのだろうか。いや、本当は修学旅行のお土産に長寿の御守りをくれただけなんだが。 ――――孫娘、か。 まぁ、そんなこんなで孫娘に思いを馳せながらもユサのもとで生活し、3年が経った。 そしね私が10歳となったある日のこと。 「敵襲だ!」 「敵襲~~~~っ!?」 そんな、かわいいひ孫の巣に敵襲!?嫁が!やしゃごが!ゴブリンたちが危険に~~~~っ!?は、まさか……! 「町のみんなと何か……!?」 「いや、町のみんなではないんですけど」 アーシャが困ったように首を傾ける。 「人間の女の子を捕らえたそうなんです」 はぃ……?人間の女の子? 「あ、会いに行こう」 「いや、ばあちゃん、危険だから」 「ここは俺たちが」 孫たちは言う。 「だまらっしゃいっ!!」 この孫たちはよく暴走するのだ!何回あんたたちのばあちゃんやってると思ってるの!!! 「じゃぁみんなで行こう。ね、父さん、おじさん」 元息子、甥っ子からの言葉に、元父親リオと元叔父グレンが渋々頷いた。 そしてみんなで捕らえられた子を見に行った私たちは唖然とした。そこに、いたのは……!! 「まさか、こんなとこまでばあちゃんを!?」 「今までの恨み、忘れると思ったか!!」 王都で生活してきた組、リオとグレンが怒りを滲ませる。まぁリオは3回目から、グレンは公爵邸で暮らしてきたんだからもちろん知ってるよね。……彼女は……。私の異母妹コーデリアだったのだ。 つまりは、公爵が不倫した男爵令嬢の娘で、聖魔法を持つがゆえに私を蹴落とし王太子に取り入ったはいいものの、必ず別の公爵令嬢……聖女に蹴落とされる残念ヒロインちゃんである。 彼女は私とは誕生日がそんなに変わらない。私の方が嫡子だから数ヶ月早く生まれたと言う程度。同じ10歳くらいである。 そんな少女がひとりでゴブリンの巣まで……?もよりの町があるとはいえ、公爵に秘密裏に王都の不倫用屋敷に匿われていた令嬢が、どうしてひとりでこんな場所にまで。 そして捕らえられて縄に繋がれた彼女はゆっくりと顔を上げて、まっすぐに私を見つめた。ピンクの髪に、群青の瞳。今まではお目目くりっくり~、明らかにヒロインタイプ~~と思っていただけの彼女だったのに、今回は何か脳裏にびびっとくるものがあったのだ。 「お、おばあちゃん……!!ヒナだよ!私、ヒナ!!」 そう叫んだコーデリアにリオとグレンがぽかんと口を開ける。そして彼女の名前を聞いたからか、2人も何かを感じとったらしい。 『お前かぁぁっ!ヒナ――――――――っ!!!』 「うわあぁぁぁんっ!!おばあちゃあぁぁんっ!お兄ちゃあぁぁぁんっ!!!」 ――――彼女は紛れもなく、あの出撃の日に御守りを託……違いましたゴメンナサイ。修学旅行で長寿の御守りをくれた孫娘、ヒナであった。
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