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おばあちゃんとおじいさん
――――それは、嫌に朝焼けの美しい日だった。
「ばあさんや、本当に行くのかい」
「……とめないで、おじいさん!おじいさんに今とめられたら、決意が揺らいじゃうっ」
「なら、なおのこと!行くな、ばあさんや!宇宙になんぞ行かなくていい!このまま……地球で、暮らそう……!!」
「やめて……っ、それ以上は、ダメ!私は、私は行かなくてはならないの……っ。孫たちのために。UFOに拐われて戻らなくなったリオのために、行かなきゃならないの……っ!」
――――あれ……?
UFOに拐われて改造されたのはレンだったような……ヒナ、ではないよねぇ。
「それで、おじいさんと会ったって」
何事もなく続ける私。ちょっと焦ってる。壮大なえすえふの設定拾うのに超焦ってる。
「う~ん、毎回じゃなかったし、記憶取り戻す前のことだから確かじゃないんだけど、おじいちゃんっぽいひとを見かけたんだ。とは言っても、おじいちゃんそのものじゃなくて。その、年取ってない」
そりゃぁそうじゃぁぁいっ!!おじいさん今の時点でおじいさんだったら今生の別れ早すぎるわっ!!せめて一緒に添い遂げさせて――――――。
地球から2回同時になんて贅沢?そんなことはない。だって死に戻ってるもん……!ちったぁ死に戻りさせてる慰謝料として、おじいさんと添い遂げさせてえぇぇ――――――――っ!!!
私今、10歳。
「そんで、どこで見かけたんだい?」
「紛争地帯」
おぅっふ、ヒナのダークメモリー時代~~~~っ!?
「つ、辛ければ無理にとは」
「そんなことないよ!私だって……日本での記憶みたいに、おじいちゃんとおばあちゃんが仲良く縁側でお茶飲んでるところ見たいもん……!」
「ヒナ……」
地球でそんなシーン、あったかねぇ……?
えすえふ……えすえふで創作しようか。うーん、冒頭のシーンを縁側にして、それから。あ、お茶飲みながら……かぁ。2人ともお茶持ってることにしよう!うん、これでよしっ!!
「それで、じいちゃんはどうだったんだ?」
リオが問えば。
「年齢は私よりも3歳年上だったよ」
ふむふむ。地球でもおじいさんの方が3歳年上だったんだよねぇ。
「黒髪黒目」
ちょっとリオに似ているかもねぇ。まぁ、おじいさんと孫だし……って、それ地球の話ぃっ!!
「あ、でも角は生えてなかった」
「何言ってんだおめぇ」
ぽかっ
「いだあぁぁぁいっ!!!」
リオのぽかっに涙目を浮かべるヒナ。あーもぅ、あんたたちは……!
「リオ!妹の頭叩くんじゃないの!」
「種族的なことのためにも必要な情報だって、兄さん」
すかさずヒナとリオの間に入るグレンは変わらないねぇ。
「おじさんが一番紛らわしくない?」
ユサの言うこともごもっともだけどね!?
「でも何でじいちゃんだって分かったんだ?」
「えーっとね、よく分からないんだけど、今ならそう思う……かも。勘かな?」
「さっぱり役に立たない!」
「じゃぁお兄ちゃんは何か知ってんのかよーっ!!」
「あーん、もぅ、やめなさい2人ったら」
喧嘩するほど仲がいいのは微笑ましいけれど、おばあちゃんとしてはドキドキはらはら。
「それでヒナ、じいちゃんは?」
いつも通り仲裁に入るグレンに、ヒナがリオへの威嚇をやめてグレンを振り向く。
「んー、多分おじいちゃんも孤児のはず……だから、生きていたとしても、兵士かな」
な、なんですとおぉぉぉ――――――――っ!?危険と隣り合わせの場所にいて、しかも兵士って……。
「は、早く助けに行かないと!」
「でも、ばあちゃん、もう年なんだから」
年ではないぞ、孫よ。私の肩についつい両手を乗っけるリオを見上げる。これも地球での癖だろうか。
「幼いんだから」
言い直さないぃぃっ!!しかしそれも事実である。
「公爵家のつてで何とかできないのかな?」
と、ユサ。いいとこいってるけど。
「うち汚職だらけだもの、無理だって」
そもそも私は捨てられたも同然の娘。今は愛人とクズコラやってる公爵の視界には入らないだろうしな。
「でもさ、1度目は紛争地帯まで来たんだよね」
と、グレン。さすがは騎士。いろいろ詳しいというか、なんというか。そう、魔王となったリオが攻めたのは紛争地帯。辺境伯領があり国境もあるくせに、紛争が絶えない地帯。そこに出撃できるということは、公爵は少なくとも何らかのつてを持っていたか、国権を使ったかのどちらかだ。
公爵だもの。王家の次に偉い家格。そして公爵を邪魔に思った聖女の父公爵がそれを推せば……あのバカオヤジは気付きもせずに手柄を上げるために出向くだろう。ヒナの話では聖女が一番怪しそうだしなぁ。
「ヒナは何か知らない?ゲームの知識とかで何かないか?」
「ゲームではあんまり出てこない、かな。リオ兄はゲームでも魔王で、王国を攻める地は辺境伯領で合っているけど……地名しか……ヒロインが魔王と戦うのは王都なんだよー」
いや、王都まで攻められるってよほどだな王国!!ゲームの中だけど大丈夫かうちの王国。……いや、ダメかもしんない。あの王太子だもんなぁ。
私は未だ10歳。孫たちには無理をさせたくないしなぁ……。今できることは……少ないってことなのだろうか。
もしかしたら……せっかく会えるかもしれないおじいさんが……。命の危機にあるかもしれないのに。私たちにはおじいさんを助けるすべがない。
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