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おじいさんを探しに
――――2$¥£年。
地球は未曾有の危機を迎えていた。
金の価格が上昇し、円安が進み、株式市場すら崩壊した荒廃した日本で。
私はずっとずっと追い求めていたおじいさんと再会した。
「もう……もぅ、どこにも行かないで!おじいさんと私には、孫もひ孫もいるのに。孫たちも、ずっとおじいさんが帰ってくるのを待ってる。だから……だからもう、どこにも行かないで!!」
「……」
おじいさんは悲しい目で私を見つめる。その答えは分かっている。
何年……いや何十年連れ添ったと思ってるんだ。おじいさんの言いたいことも、気持ちも伝わってくる。分かるのだ。
だからこそおじいさんの本音と、その答えの矛盾が……とても、とても虚しく、悲しく、私の心を締め付けるのだ。
「……おじいさん」
――――私の呟きに答える声はもはやない。
※※※
あぁ、おじいさん。あの時どうしておじいさんの手を無理矢理にでも引っ張らなかったのだろうか。
そんなの決まってる。
老いた身でそんなことしたら、骨折とか転倒とかいろんなリスクがあるからだ。
いや、その前に今までの回想は全部ウソっぱちである。ごめーん。
て言うかみんなもう気付いてたよね!?バレバレだよね!?
言っておくが私は前世ほら吹きばあさんなんてやってないから……!
たんにユニークなお話が大好きなおばあちゃんやで!!
たまに調子にのり過ぎて入れ歯が飛んでみんな大爆笑なお約束な展開になるだけやで……!!
はぁ……。それにしても、目下の問題と言うのは。
……おじいさんは未だ紛争地帯で戦っているのだろうか。私は今はただの10歳の……ちょっと死に戻りしすぎな少女である。できることは少ない。
できることと言えば。
ヒナやシャーシャに刺繍や編み物などの手仕事を教えて、それを町で卸して来る際に情報を集める程度。
しかしめぼしい情報はない。ここは比較的辺境地帯に近いとは言え、山ひとつ隔てた先。紛争の影響は商売面でたまにでるけれど、国境側ではなく国内側で商売をすれば問題はないようで。
たまに辺境側で高値で仕入れられることもあり、アーシャが町の有力者を通じてここいらの領主に近い人物から情報を仕入れてくれる程度。
それでも辺境側の噂は……きな臭い。
辺境伯のいい噂も聞かないくらいである。それでもまだ、リオたちがこちらにいる以上魔族の集結も結託もなく、それに向けた国内の軍強化の知らせも聞かない。
おじいさんの有力な情報も掴めず。
今生ではまだ子どもであるがゆえに、孫たちからも単身おじいさんを探しに行くことは反対されてしまった。
けれどもゴブリンたちと人間たちの関係は良好で。穏やかながらも、胸の奥にぽっかりと空いた穴を抱えながら、気が付けば5年もの歳月が過ぎていた。
「私はもう15歳。あまたのヒロインたちが冒険に出る年よ!!」
「確かにゲームも私が15歳の時に始まるよ!!おばあちゃん!!」
ほーらぁー。ヒナもこう言ってることだし。
「いや、まだ15だろう?」
既に17歳になっているリオに呆れられる。
「子どもには変わりないじゃないか」
24歳になっているグレンにまで。
だけどおばあちゃんは……。おじいさんを探しに行きたい!せっかく、ヒロインが活躍し出す年齢になったのだ!
過去の死に戻り前には、若くして処刑されたこともある。16歳で殺されたことすらある。
だから、生きなくちゃ。そのためにはおじいさんがいないと意味がないのよ。
今度こそ。やっとおじいさんの居所が分かったのだもの……!
おじいさんを見つけてあげたい。迎えに行きたいのだ。
しかし物語の転機と言うか修羅場風味な知らせは突然やって来るものなのである。
「ひいばあちゃん、大変だ!」
息せききってやって来たのはひ孫のユサ、そしてその嫁アーシャとやしゃごのシャーシャだった。
「何があったの?」
まさかゴブリンと人間たちとの争い!?いや、そんなはずは。アーシャがこちらに嫁に来たこともあって、こちらの領主との関係も良好なはずだし。
だとしたら一体何が?
「帝国が国境を侵犯した」
は……?帝国……帝国ってあれよね。
辺境伯領には魔物たちが蔓延る魔の森がある。魔の森は1回目でリオが魔族を率いる拠点とした場所である。魔王となったリオが辺境伯領に進軍したのだ。
その他辺境伯領には国境もあり、国境を越えれば隣国の帝国がある。
しかし今までの回帰で帝国が直接この国に攻め行ってきたことなどない。
もしかしたら。
「ゲームのイベント……?」
「いや、ゲームでは王国と魔王の戦闘がメインだったし、そもそも帝国の存在なんて知らなかったよ。知ったのは、この世界に転生してからだよ」
と、ヒナ。
まぁこの世界の人間で……それも紛争地帯の出身のヒナならば、おのずと知っているはずだ。あそこには紛争となる原因がある。
しかしながら帝国はそれに介入しようとはしない。あの紛争の火だねとなっているものに、帝国は不干渉を貫いたからだ。それなのに、何故。
「何故帝国が攻めてきたの」
「多分……アーシャが得た情報では……紛争が原因だ」
そんな……っ。過去の回帰で散々その問題を放置してきた帝国が……何故。
まずは、あの地の紛争の原因について……語らねばなるまい。
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