第十二話

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第十二話

 それから数時間が経過した。窓から確認できる限り、空はかすかに白味を帯びていき、朝焼けが確認できるくらいには明るくなった。  この病室もやはり、埃があまり溜まってないのか、足跡はもちろんのこと埃が舞うことはなかった。誰かが定期的に掃除しているのだろう。  その間俺達はひたすら翔太のトランプの相手をしていた。  時計のレーダーの反応は4回。人数は少しずつ減っていっているようで最後の反応時点で二十人なのが確認できた。  ……そう、それだけなのだ。  なにか誰かと戦闘があったわけでもなく、誰かが仲間になったわけでもない。GMの目処がついたわけでもない。ただ拠点でトランプをしていただけだ。  こうも平和な時間が過ぎていくと、逆に不安になる。なんというか、嵐の前の静けさというべきか。  気づけば俺達の間には、強固な信頼関係が構築されていた。  残り二十人の中の三人組は俺達三人。俺、鈴香、翔太。んで、一人で行動している奴達がちらほら。  そして二、三人で行動している奴達に、四人組で行動しているグループが一つ。  攻めるなら一人で行動している奴か、二人のとこか……。  少なくとも、もう陽希と奈津、透真の三人組とは会いたくない。正直勝てる気がしない。  どうでもいいけどあの三人組に「あき」がいないな……。飽きないから以後三銃士と呼ぶことにしよう。  そんなことを考えながらそれぞれにカードをより分ける。気づけば、鈴香もトランプに参加しており、何度目かの大富豪、いや大貧民をしていた。  夏の暑さを思い出したのか、室内がとても暑く長袖を脱ぎ捨てたくなる衝動に駆られる。いや、脱がないけどね。  割れた窓から生暖かい風が吹く。蝉が思い出したかのように鳴き始める。蝉が鳴くと夏らしくていいが、より熱く感じるのは気の所為だろうか。  今頃テレビをつければ温暖化がどうのこうの。熱中症で誰かが倒れて、塩分水分補給しっかりしましょうてきな……。そんなことやってるんだろうな。  鈴香が真剣な顔で手札とにらめっこする。  動くならそろそろだろうか。  大貧民はローカルルールが多いため七渡しと十捨て、など有名な役しか採用はしていない。  それでも十二分に楽しめるし駆け引きは楽しかった。  俺は残った手札からジョーカーを選び場に出す。これで次も俺のターンなので七を出して、手札を翔太に押し付けてあがり、と。  そろそろ作戦会議をせねば。人を殺すのは気が引けるが、もう手は染まってしまってるのだ。腹を括るしかないだろう。      
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