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第十五話
俺は黙って数歩後退り、足のバネを活かして一気に距離を詰める。
同時に右ストレートをおもいっきりの力を込めて繰り出す。
狙いは相手の顎だ。
人間の急所は主に身体を半分で割った線上にあり、有名なとこだと顎、みぞおち、股間だ。
人はここを狙われるとダメージを与えやすいのだ。
案の定相手は、華麗なステップで攻撃を空振りさせ、カウンターを仕掛けてくる。
飛んでくる右腕を見ながら俺は確信した。
よし今だ。
俺はそのカウンターを右前に足を出してかわし、そのまま右腕で首を掴み、そのまま押し倒す。
児童養護施設の職員が暴力を振るう子どもによくやるやつだ。
そしてそのまま馬乗りになり、相手を拘束する。
「さあ、降参するなら今のうちだぞ……? 別に命まで取ろうってわけじゃないんだ。別に時計を取るつもりもない。」
彼は抵抗する気力を失ったのか、力ない声でつぶやく。
「何が目的だ」
「簡単なことだ、同盟を組みたい」
「同盟だと?」
同盟を組むメリットは一つ、存在する。
それは多くの人数で戦えばそのグループが生き残れる確率が大幅に上がるということ。どっからどう考えても一人で戦うより、複数人で戦ったほうが勝てる。
それぞれで潰し合うのはそれからでも遅くない。
「それで手を打てというのか」
「嫌なら別にいい。ここでお前の時計を取って、お前はゲームオーバーになるだけだ。なに、心配はいらない。すぐお前の兄貴とやらもそっちにいくさ」
「……兄貴は俺よりも強いぞ」
「そっか。それなら、なおのことお前たちと同盟が組みたいな」
彼は大きくため息を付き、そして言った。
「兄貴、この勝負やめだ。こいつらの話をきいてくれ」
すると鈴香たちの戦闘がピタッと止まる。兄貴とやらはこっちを凝視し、そしてこちらに近づいてきた。
「立のくせに、随分と情けないことになっているのだな」
「悪ぃ兄貴、負けちまった。そんなことよりさ、俺こいつらと同盟組むことにしたわ」
おいおい、そんな簡単に決めて言う事なのか……。もし俺達が裏切ったら……。
「その心配はない。その時は僕がおもいっきり捻り潰すから」
おっと……言うねぇ。
「まぁ、俺は正直ここでゲームオーバーする予定だったんだ。だから、正直裏切られようが裏切られなかろうが関係ねぇ。
俺は眼の前にいる敵をぶちのめすだけだからよ」
「ちょっとまて、僕はまだ同盟組むとは言ってないし、どういうメリットがあるかも聞いてない。まぁ、自分の弟を手に掛けるのは嫌だから同盟組むが」
結局組むのかよ。
そして俺はメリットを兄の方に説明した。
納得はしてもらえたようでこれで晴れて俺含む五人の仲間ができたってわけだ。
なんかRPGみたいで楽しい。
現実はだいぶやばいが……。
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