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そんな紫春の想いに答えるように玲は頷いた。
これで終わり。ああ……親友の頼みも完遂できなかったな、なんて紫春が切なそうに思えば、次の玲の言葉に紫春は目を見開いた。
「報われるなら、このまま変わらずにいれるのか?」
そんな玲の言葉に驚いたのは紫春の方だ。
驚きで腕の力が緩んだ紫春の身体を今度は玲がギュッと強く抱きしめる。そしてはっきりとした声で続けた。
「正直、紫春のこともあいつのことも。どっちとどうなりたいとか、今はわからない。でも、はっきり言えるのは私は紫春とこのままサヨナラなんて嫌だってこと」
凛とした声が耳元で響く。
「だから、勝手に私の気持ち決めつけて離れるのやめろ」
真剣な声音で言われるそれに、思わず「うん」と言いそうになって慌てて言葉を飲み込む。
それはダメだと首を振るが、それでもなお玲は続ける。
「……一緒にいたい相手くらい自分で選ぶ。紫春は私にとって特別だから、今までの誰とも違う」
そう告げた玲の言葉に「そっか……」と紫春が呟いた。
こういうところに惹かれたんだよなと、紫春は苦笑する。
自分一人でウダウダと悩んでいたのがバカらしくなるくらい、玲は真っ直ぐだ。
そうだ、自分は知っていたじゃないか。玲は裏表のない言葉を告げてくるのだと。
玲が特別だと言ってくれたことが、今はうれしい。
そのうれしさに、少し欲張りになってもいいだろうか?
「……引越ししよっかな」
「は?どこに?」
突然呟いた紫春に玲は驚くと同時に体を離して怪訝な顔をする。それもそうだ、何故今この状況で引越しの話になるのか。
しかし、根無し草の紫春にとっては一大決心だ。
「ここに」
紫春は玲の心臓の位置を指差して告げる。
「きみの心に俺の居場所、あけといてね」
その言葉に玲はきょとんとしたが意味を理解してすぐに顔を赤くする。
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