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意地っ張りで素直じゃない親友に頼まれて、そばにいたり、手助けをしたり。時には彼女の危機に駆けつけて守ったりもした。
彼女に笑顔を向けられてる最中も、利用価値を見出して、親友は彼女の何がそんなにいいのかと疑問に思ったりもした。
しかし、関われば関わるほど玲の存在が紫春の中で大きくなる。
損得なしで向けられる善意に、自分が悪いことをしているような気分になった。
強気に笑う横顔に、前を向くその姿勢に、惹かれる。
いつしか、そんな彼女の中に居場所を求めてしまっていた。
その場所には、親友が既にいると理解しているのに。
望みの薄いこと、親友に遠慮していること、全てが紫春の一歩を踏み出せない足枷になる。
今日もまた、玲の隣で微笑んで本音を隠して紫春は、彼女の一番の理解者を装うのだ。
***
「なぁ紫春、なんでいつもそんな気にかけてくれるんだ?」
ある日、いつものように玲の隣で紫春は彼女と話をする。その時にふとでた玲からの質問。
「え?なんでって。玲のことはあいつに頼まれてるからね。気にかけるのは当然でしょ?」
紫春はキョトンとした顔をする。そしてさも当然のように答えた。
この表情も言葉も全て演技。
自分自身が、そばにいたいから、必要以上に隣にいる。
そんなこと、言えるわけがない。
「そうは言ってもさ、紫春には紫春の生活があるんだし。私中心にしてたら疲れるだろ?」
「俺は、負担に感じてないって。それに、困った時はお互い様って言うでしょ?俺も頼まれただけじゃなくて、そんな感じで玲のことを助けてるから」
紫春は嘘をついた。
そうしなければ、玲の性格上突っぱねてくるだろうし、この関係が終わってしまう。
それだけは紫春も避けたかった。
それに……玲といると、自分が自分でいられるようなそんな気がするから。
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