自分の居場所

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「……本当のこと言ってたら、玲は今のように、きっと俺を理解できないって思うよ」  静かに淡々と話す紫春。顔を上げたその目は、ゾクリとするほど冷たくて……玲は怯む。  そんな玲に紫春は、掴む手に力をこめる。 「俺は人の繋がりは所詮利用価値があるかないかだと今も思ってるし。優しくすればすぐに取り込めるって考えてる」  そう言って紫春は自嘲するように笑ったが、その目は笑っていない。 「だから言うよ。俺はね、ずっと玲のことそういう目で見てたんだ。親友の頼みだからって言いながらも本当は、玲に何のメリットがあるのか。優しくすれば、玲はすぐ俺に懐いてくれたね。単純で笑えた。もちろん面倒になったらすぐに離れられるように一定の距離は保ってたつもり」  紫春は淡々と、でもどこか寂しげに告げる。  その姿に玲は、ただ……顔を歪めて意味もなく「なんで……」と声を漏らすだけ。  そんな怯える様子を見て紫春は限界だなと思った。  紫春はもう自分の人間性を知られたくなかった。優しさで人を利用して、依存させて、いらなくなれば離れて。  そんな生き方をしてきた自分を、玲にだけは知られたくなかった。  でも、もう無理なのだ。ここまで話してしまい、今更後戻りはできない。  どうせ離れていってしまうなら……今ここで、もう未練すら残さないように、玲に拒絶されなければならない。  紫春は掴んでいた玲の腕を引っ張ると、バランスを崩した玲が倒れ込むように紫春の腕の中に収まった。 そんな玲の身体をぎゅっと抱きしめて耳元で囁く。 「俺はね、今までそうやって人と関わってきたんだよ」 「……む……つき?」  戸惑うように名前を呼ぶ玲の声。もうこれが最後かと思うと愛しくて仕方がなかった。  このまま離してやれないなと思うと同時に、こんな自分に捕まってしまった彼女を哀れに思う。  でもそれも一瞬のこと。
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