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すぐさまそんな感情は切り捨てる。
「だからね、玲のことなんかいつでも手放せるんだ。あいつの頼みだって、利用価値がなくなったら、離れればいい」
わざと突き放すようなことを言えば玲は傷付いた表情を見せる。そんな顔を見て紫春は仄暗い笑みを浮かべた。
これでもう全部終わりにできると安心していたのに……それでも玲は紫春を受け入れようとするのだ。
その証拠に、玲の顔はまだ何かを期待するような表情。
嘘だって言って欲しそうな、そんなもの。
「なんだよそれ……」
「だから俺とはもう関わらない方がいいってそのために少し距離おいたのに。今日もわざわざこんな話してきてさ、自分からショック受けにくるなんて笑えるね」
玲は酷く傷ついた顔で見てくる。ああ、今だけは親友ではなくて、自分だけを玲は見てくれてる。
そんなことでしか報われない自分に紫春は笑った。
酷く滑稽な自分に。
「これ以上俺のことを知って幻滅されるくらいなら、このまま離れた方がお互いのためでしょ?」
そう言って、玲を解放する。玲は逃げるかと思ったが、紫春から目をそらさず見てくる。
「別に……幻滅なんかしないし」
「……だから?」
突き放したのに離れないでと願う浅ましさを感じながらも、この先を望む自分がいる。
そんな自分に紫春は自嘲するしかなかった。
「だって……」
「うん」
もうどうでもよくなって続きを促すように適当に相槌をうった。
「紫春がどんな人間だろうと、私は紫春のこと嫌いにならないよ」
玲はそう言った。それは、紫春が想像もしてなかった答えで。
「なにそれ」
まるで縋るような気持ちで彼女を見たのに、彼女はそれを受け入れようとする。
「だって、どんな紫春でも、特別な存在に変わらないから」
そう言って笑う彼女に、紫春の心が揺れる。
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