小さな回顧録

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わたしは、あまり親に見向きされない子どもだった。 そして、子どもは5歳のときに辞めた。 妹が生まれてから、わたしは子どもでなんていられなかった。 家のことをしなくちゃいけない。 妹の世話もしないといけない。 両親の事情を直接聞くことなく、察しなければいけなかった。 母親の意向に沿って行動しないといけなくなった。 母親と妹と3人の暮らしになってから、その暮らしを不幸だと思ったことは無いけれど、わたしはわたしでなくなった。 子どもながらに、それなりに頑張ってきたと思う。 家事や妹の世話は当たり前のこととして、地域の役割も、地域の大人に疎まれながらも笑って済ませてきた。自分のことを親に相談したことなんて一度もない。 言ったところで、聞いてもらえたこともない。 親が口を開くのは、自分の思うように行動させたい時が大半だった。 それでも、片親でふたりを育てていくことの大変さはわかったから、何も文句は言わなかった。 聞いていれば、波風立てなければ、平穏に暮らしていけるから。 いい子だったと思う。 わたしは、いい子だった。 親にとっては、とても理想の子どもだったんじゃないだろうか。 それを、都合のいい子。 って、言うのだということは、もっと後になってから知ったけれど。
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