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その頃の思佑は愛海の部屋で待つこと早20分。 本でも読んで時間を潰せたらと思うが、生憎愛海の部屋に思佑が興味を持つような本はない。
ただそれでも暇しているかと聞かれれば思佑はNOと答えるだろう。 何故なら思佑はベッドを背に膝を抱えたまま動けなくなっていたからだ。
「愛海、めっちゃ俺のこと好きじゃん・・・」
膝を抱えている手に力を込める。 思佑も愛海の心の声が聞こえていた。 愛海同様昨夜からで、赤くなっているであろう顔を隠すよううずくまる。
―――平静を装ってはいるけどこの状態が続くのは流石にキツ過ぎる・・・。
―――でも何なんだろう、この不思議な現象。
―――確かに愛海本人の声だけどこれは本当に愛海が想っていることなのか?
―――しかも今想っているということは現在進行形?
―――昨日からいきなり聞こえてきたから驚いた。
―――・・・もしかして昨夜・・・。
昨夜は翌日のデートのことを考え浮足立ちが止まらなかった。 寝坊しないように早めに準備を済ませ、まるで小学校の遠足前のような心の高揚。
―――明日は天気がいいのか、デート日和だな。
天気はバッチリ。 行く場所が決まっているわけではないが、天気がいいに越したことはない。 さて早めに寝ようか、そう思ったところで愛海から一通のメッセージが届いた。
『今日は凄い流れ星の大群が来るらしい! 思佑くんも一緒に見よう!!』
―――って、語彙力なさ過ぎ!
―――だけど流星群か。
―――そう言えばテレビでやっていたかも。
―――100年に一度みたいだし折角だから何か願ってみよう。
そう思い窓を開けた。 そこでも考えるのはやはり愛海のことだ。
―――・・・愛海も今空を見上げているのかな?
―――そしたら今離れていても同じものを見ていることになる。
それだけでも心が温かくなった。 見上げていると流星群が横切った。
【愛海が俺のことが好きかどうか分かりますように!!】
奇しくも同じ流星群を同じ時間に見て同じ願い事を願うことになるのだった。
そして現在に至る。
―――・・・本当にあの嘘のような願いが叶ったのか?
耳を澄ませてみる。 今は何も聞こえてこなかった。
―――何も考えていないっていうことはないだろうから、俺以外のことを考えている時の気持ちは全く伝わってこないということか?
―――愛海のことだから無意識状態で動いている可能性もなくはないけど。
―――昨夜から考えれば聞こえない時間もかなりあるから、流石にそれはないよな。
―――・・・ただ、もしこれが俺の勘違いだとしたらどうしよう。
それから数分が経ち階段を上ってくる音が聞こえ思佑は姿勢を正した。
「お、お待たせ・・・」
「・・・!」
淡いピンク色のワンピースを着て愛海は姿を現した。 恥ずかしいのかドアの前で縮こまっていた。
―――テレビに出ているアイドルよりも可愛くない!?
余所行きの服のせいか愛海は顔を赤くした。
「やっぱり凄く似合うね、そのワンピース」
「あ、ありがとう・・・。 お気に入りの服がまた一つ増えたよ」
―――そりゃあ愛海に着てほしい服を俺が選んだからね。
「気に入ってくれたなら何より」
笑顔でそう答えると愛海は軽く視線をそらした。
“実はちょっとフリフリ過ぎて恥ずかしいと思ったり・・・。 でも思佑くんが喜んでいるならいいかな”
「・・・ッ」
脳内にそのような声が響き渡り恥ずかしくなった思佑も軽く視線をそらした。 二人の間に沈黙が流れる。
「そ、それじゃあ行こうか!」
この空気に耐えられず二人は外へと出た。 今日も元気な愛海の母に見送られながらチラリと愛海を見る。 愛海はどこかそわそわしていてそれが可愛く見えた。
―――・・・男の俺から告白したいところだけど、勘違いした俺のせいで関係が崩れるのは嫌だ。
そう思いながら前を向いた。
「愛海から告白してくれないかな・・・」
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