想い想われ伝わらない

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少々時を戻し愛海が美恋に連れられて離れていった頃。 愛海たちを見送った後睦秋は気まずそうに頭を掻いた。 「・・・あー、すまないな。 ウチの彼女が強引で」 「はは」 強引ではあるが思佑にとって知らない仲ではない睦秋と残されたことはまだマシだと思えた。 これが全く面識もない相手と二人取り残されていたらたまったものではない。 とはいえ愛海と折角のデート中ということもあり複雑な気分は否定できなかった。 「思佑たちは付き合っていないんだろ? 何していたんだ?」 「別に幼馴染で仲がいいから一緒に出かけているだけ。 友達同士で遊びに行くでしょ? そんな感じだよ」 「ふぅん・・・。 あっちは思佑のことが好きなんじゃないかと思っていたけどな」 その言葉にドキリとした。 「・・・え、本当に?」 「いや、美恋が言っていたんだよ。 『あれは完全に恋する女の子だ』って」 そう言われると余計に期待してしまう。 「・・・ま、まさかな」 「まさかって言うけど、男女が二人きりで出かけるとなると思佑だって何も思っていないわけじゃないだろ? とりあえず別行動になったし俺たちも時間潰しにどこかへ行くか」 「そうだね」 二人は適当に歩き始めた。 「確認だけど思佑は愛海のことが好きなんだよな?」 「まぁ」 「美恋の言っていることが正しければ相思相愛じゃん。 どうして告白しないんだ?」 「もし告白して失敗したら今の心地いい関係が崩れるからだよ」 「そんなの誰だって一緒だろ。 失敗した時のことを恐れていたら何もできねぇじゃん」 「そうかもしれないけど俺と愛海は訳が違う。 幼馴染で小さい頃から互いを見てきているんだ。 互いの親との関係もある」 「親、かぁ・・・」 「失敗するくらいなら頼られる幼馴染のままでいようかなって思うんだ」 「・・・何となく言いたいことは分かるけどお互いが両想いなら構わないと思うけどな」 「いや、愛海は俺のことが好きって確定しているわけじゃないから。 それにもし上手くいったとしても、それがずっと続くっていう保障はないしさ」 「それこそ無意味な心配だって。 そりゃあ別れるっていうことになったら今まで通りの関係を続けていくわけにはいかないのかもしれない。  だけどそんなことを言っていたらこの先誰とも付き合うことはできないぞ。 付き合って別れて、そして関係が悪くなって問題がない相手を選ぶって言うのか?  思佑はそんな相手で妥協して本当に好きな人を始まる前から諦めるって言うのか?」 「・・・それは、嫌だ」 「だろ? じゃあ動かないとだ」 上手く乗せられているだけかもしれないが睦秋の言うことは最もだとも思えた。 それに告白を受け入れられるのかどうかもまだ分からない。 ―――心の声が本当なら確定かもしれないけど・・・。 ―――こんな魔法じみたことを言うのは流石にな。 「そうだ! 逆に告白されるよう仕向けてみるのはどうだ?」 「それは一応やってはいるんだけど・・・」 「上手くいっていないならやり方が甘っちょろいんじゃないか?」 「そ、そんなこと」 「多少強引にでもいってみる時期が来ているのかもしれないぞ?」 「強引に、って・・・」 「例えばボディタッチとか! 好きか嫌いかハッキリ分かると思うぜ?」 その言葉に睦秋を見た。 「・・・それは本当?」 「本当だって! 好きでもない相手からベタベタ触られたら嫌だろ? もし愛海が思佑のことを触ってきたらどうよ?」 想像してみる。 「・・・それは、嬉しい・・・」 「はははッ。 鼻の下伸び過ぎ」 「でも本当に付き合ってもいないのに大丈夫なのかな」 「大丈夫だって。 思佑と愛海はずっと一緒にいるんだから周りからしてみれば付き合っているようなもんだから」 「そうなの・・・?」 「他の女子には触らないけど自分にだけは触ってくれるっていう特別感がきっといいはずだ」 「へぇ・・・」 半信半疑ではあるがアドバイスを聞いてみようかなと思ったその時だった。 しばらく聞こえていなかった愛海の声。 しかしそれは今までと違って聞きたくない言葉の羅列だった。 “女の子が離れていくっていう時に止めないとか男らしくない。 もっとリードしてほしいのに思佑くんは優柔不断なところが多いし。 このままの仲のいい幼馴染の関係もそろそろ解消かな” 「え・・・」 「・・・思佑、どうした? 今の一瞬で顔が青ざめたけど何かあったか・・・?」 「あ、いや・・・」 今の声を聞いて居ても立っても居られなくなった。 「ちょっと俺、愛海を探してくる」 「思佑! どうしたんだよ、突然!!」
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