花弁の舞うその先へ

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「……それでいいなら、ほんとに貰っちゃいますよ」 「ええよ、そんなに気に入ってもらえてるなら、そのカップも嬉しいやろうしね。蛍子ちゃんもそのカップあげようか?」  ずっと若竹色のカップを観察していた蛍子に声がかかる。 「え、いや、これは商品だし、ちゃんとお金払います!」 「紅莉ちゃんにあげといて、蛍子ちゃんからだけ貰うのも申し訳ないし、それも奥にしまってあったやつやから気にせんでええよ」 「じゃああんまり遠慮せずにいただきます……」 「そしてじゃああげるついでに、これもどうぞ」  純恋さんがカウンターから二人に向けて、小皿を二つ出す。小皿の上にはそれぞれ三枚ほどクッキーがのっていた。 「え、そんな貰ってばっかり」 「これは試作だから、ちょっと味見してほしいんよ」  クッキーは小麦色の生地にほんのりとピンク色がかかっていた。 「クッキーに桜の塩漬けを使ってみたの。なんか春っぽくて良さそうでしょ?」  この時期は桜の季節ということで、最近は桜関連の食べ物も増えてきている。見た目も可愛くて美味しそう。女子にウケそうだ。 「ほんと貰ってばっかりですけど、良いんですか?」 「気にせんといて! よく来てくれるし、また来てくれるでしょ?」 「それはまあ来ますけど……じゃあいただきますね」  クッキーを口に運ぶ。サクサクの生地は食感が良く、生地の甘さと桜の塩漬けのしょっぱさが丁度いい。そして桜の香りがしっかり口の中に広がり、春らしさを感じることができる。美味しい。 「美味しいです!」  率直に感想を伝える。その隣で蛍子が味を楽しみながら、勢いよく頷いている。蛍子も同じ感想のようだ。 「なら、良かったー! これで春の間のメニューは決まりね」  甘くないカフェオレとクッキーが合っている。これならたぶん誰が食べても満足するだろう。もう一枚クッキーを手に取り、口に放り込む。 「で、なんでマグカップ割っちゃったの?」  話が一つ落ち着いたところで、純恋さんが急に最初の疑問を出してくる。 「いや別に落として割ったわけやないんですよ?」 「紅莉の馬鹿力が原因ですよ」 「だからちゃうって!」    † 「へえ、じゃあ紅莉ちゃんは蛍子ちゃんをほっぽって猫と遊んで人助けしてたわけね」 「なんか言い方酷くないです?」
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