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少し冷めたカフェラテを飲みながら、虎猫のマグカップを見ながら言う。
「縁が結ばれたんやから、きっとまた会える。会いたいと思うんやったら会えるんとちゃうかな。……全部紅莉ちゃんの師匠の受け売りやけどね」
純恋さんは笑って言う。
右手につけたピンクと藍のブレスレットに触れる。
確かに先生も同じようなことを言っていた気がする。
出会いがあれば別れもある。別れがあれば出会いもある。
出会いがあって、別れがあって、また出会う。人生はそれの繰り返しだ。
それをどう楽しむかは、紅莉次第や、と。
「あ、そろそろ帰らんと」
蛍子が壁にかけてあった時計を見て呟く。
時計はあと数分で十七時を指す。
気づけば長い間店に居座り続けてしまった。
「私も帰ります」
そろそろ帰らないとお母さんが怒る。晩御飯の用意も手伝わずに遊んでいる子には晩御飯抜き! とか言い出しかねない。
純恋さんが提示した飲み物代を渡す。ココアもカフェオレもどちらも四百円。この量でこの値段ならかなり安い。それにこれだけ居座って喋り倒し、さらにはクッキーとマグカップをもらってしまった。
これまでもそうだけど、これからも純恋さんには頭が上がらなさそう。
「うん、気を付けてね。日も長くなってきたけど、まだすぐに暗くなるから」
私と蛍子は机の上に出していたマグカップを箱に戻し、箱を鞄の中へと片付ける。
「それからマグカップ、割らんようにね」
「はーい」
席から立ちあがり、鞄を持って、出口へと向かう。
「純恋さん、また来ますね。マグカップありがとうございました!」
「長々とすみませんでした。ココアもクッキーも美味しかったです」
それぞれ挨拶とお礼を伝えて、店を出る。
「はーい、毎度ー。またのご来店お待ちしてまーす」
純恋さんの元気な挨拶を聞いて退店し、自転車の鍵を外す。
「丁度いいマグカップ見つかってよかったやん」
「うん。ホタルちゃんもね」
自転車に跨って、出発準備完了。
「じゃあ私こっちから帰るわ」
そう言って蛍子は来た方とは逆の方へと向く。
「うん、またメールする」
「はいはーい。ちゃんと課題やりやー」
「それはお互いさまやろ。じゃねー」
蛍子が漕ぎ出すのを見てから私も自転車を漕ぎだす。
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