花弁の舞うその先へ

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 日はまだ暮れ切ってはいないが、周囲はだいぶ暗い。外灯はあるが心許なく、自転車のライトを点ける。  桜のクッキー美味しかったなあ。可愛いカップが見つかってよかった。  自転車を漕ぎながら今日あったことと、純恋さんの言葉をぼーっと思い返す。  私が人助けをしていないと出会わなかった人。そもそも今日外に買い物に出かけていなかったら会わなかったわけだ。蛍子と北大路駅で待ち合わせていなくても、会えなかったわけでもある。  それから小虎と小虎柄のマグカップ。これらも昨日、マグカップを割らなければそもそも出会えていない。前のマグカップには申し訳ないけど、割ったから出会えたのだ。  同じようなことを中学卒業の時に、先生に言われた気がする。  今の別れがあるから、次の出会いがある。それだけ惜しむ別れを作れたのだから、次はもっと良い出会いが得られると。  ぼろ泣きしていた私に伝えた言葉。 「変な縁やなあ」  自転車は見知った道を進み、見知った家の前で止まる。  少しの時間しか走ってないのに、辺りはもう真っ暗だ。 「また縁があるとええなあ」  そう祈るように独り言を呟き、自転車を敷地内に停める。  玄関の扉に手をかけ開ける。 「ただいまー!」  これが高校一年生の終わり、二年生に進級する直前の春休みに起こった、なんということのない出来事。  しかし、今日出会った不思議な縁たちが、私、水野(みずの)紅莉(あかり)をこの新しい春から忘れられない冒険やさらなる出会いに連れて行ってくれることを、今の私はまだ知らない。  そして、春休みを満喫しすぎて、結局最終日に宿題をやる羽目になることも、今の私はまだ知らない。
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