花弁の舞うその先へ

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「あーあ、こんな風な出会いばっかりやったらええのになあ」  虎猫の頭を撫でながら、昨晩あった出来事を思い返す。    †  出会いと別れはいつも突然だ。  大体それらは突然来る。  構えていないうちに来るから、いつも対処と反応に困ってしまう。  良いものならウェルカムなのだけど、思い返して出てくるのはあまり良いものではないものばかりだ。  私は出会いも別れもあまり得意ではない。  三月。世間的には別れの季節。三月に一区切りし、四月には新生活を迎える。これが世間の一般的な流れだ。  だが去年中学を卒業し、高校を一年間過ごしきった私に、別れという死角はない。ふふん。  去年は悲惨だった。高校に進学するにあたって、仲の良かった友達たちと離れ離れになったこと、思い出がたくさん詰まった中学の校舎から巣立ったことがかなりショックだった。それなりに充実した学校生活を送っていた私にとってはそれはもう悲しくなる出来事ばかりで、まさに涙が枯れるほど、制服の袖が絞れるほど泣いた。卒業式を見に来ていた親と先生にその様子を見られてドン引かれ、同じ高校に進学した友達には今もそのことで笑われる。不本意だ。  だけど、今年はそんな醜態を晒すことはないのだ。  次に高校二年生に進級する私にはそんな試練はないのだ。今年の私に抜かりはない。  ……終業式の日にクラス替えがあることを知り、ちょっぴり涙が出てしまったが、それはまあ耐えられないことではなかった。  また四月には学校で会えるのだから。  そんなことを考えながら、勉強机の前にあるものを見つめる。  今問題なのはそんなことよりも、春休みの宿題。  現代文・古典・数学・英語などなど。どの科目も宿題を出された。 「なぁんで、二週間しかないのにこんな宿題出しちゃうんかねえ」  渡されたプリントたちを見てため息をつく。  春休みは二週間。やれば終わることもわかってはいるが、なかなかに手を出せないのが長期休みの宿題たちである。  しかし今の私は違う。この冬休みに宿題を後回しにし続け最終日に泣きを見た私は、もういない。  過去から学ぶのが人間なのです。   「よし、さっさと終わらせちゃいますか」
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