花弁の舞うその先へ

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 何を問われたのか、女性は少しの間をかけて理解する。そしてようやく口を開く。 「あ、えっと……駅の場所がわからなくて」  やっぱりだ。困っている人だ。 「駅って、ここからやと北大路駅ですか?」 「そ、そうです。友達がそこで待ってて……」  目の前の女性は消え入りそうな声で話す。 「なら、もうすぐそこですよ。私もそこに行くんで一緒に行きましょうか?」 「い、良いんですか? ありがとうございます……!」 「じゃ、行きましょ!」  女の人と並んで歩き出す。 「ちなみに行先あそこですよ」  私は彼女にこれから向かう目的地を、自転車を押しながら指さす。  今歩いているところからもう目的地は見えている。歩いても五分で着く。そんなに遠い場所じゃなくてよかった。 「私、方向音痴で……」  彼女は歩きながらぽつりと呟いた。 「……それやったら惜しかったですね、もうちょいのとこですよ!」  駅に近づくにつれて、人通りが増えてくる。 「桜見入っちゃいますよね」  後にした川の方角から桜の花弁が舞ってくる。  今日の景色はあまり花見に関心がなくても見惚れてしまう。ああいうのを風情があるって言うのかな。  昔、桜じゃなかったかもしれないが見惚れすぎて、私自身もどっちの方角から来たのかわからなくなったことはある。後も先も似たような景色で、あの時は一瞬錯覚してしまった。  方向音痴の人ならなおさらそうなるんじゃないか、と思ったのだ。 「え、ええ……そうですね」  ……違ったのかな?  こんな会話をしつつ、駅はもう目の前だ。  交差点に差し掛かり、ここを渡れば到着である。 「流璃(るり)!」  横断歩道を渡った先から、誰かを呼ぶ声がする。  その方を見ると、茶色い褐色の肌に明るい茶髪の女の人がこちらに向かって手を振っていた。  凄い綺麗な人だなあ……。  綺麗な栗色と茶色のショートの髪。こんがりと焼かれた肌に、その肌をちらちらと覗かせるこの季節には少し寒そうなオフショルダーのトップスのコーデに、しっかりと整えられたメイク。ギャルだ。 「あ、いました。私の友達です」  ギャルの人が駆け寄ってくる。 「真白(ましろ)」 「貴方、また道に迷ったの?」 「ごめん、助けてもらっちゃった」
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