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「……うん、あの振ったら芯出てくるのもよかったけど、ちょっと高かったのと良い色合いのがなかった」
「まあ値段はするよね。ほんとピンク好きね」
「濃すぎるのはあんまりなんよね。本は買ったん?」
「うん、これ買った」
蛍子が持っている文庫本を見る。その表紙には少し前に流行った、京都が舞台で大学生が主人公の妖怪もののタイトルが書かれていた。
「まだ読んだことないから買ってみた」
「私映画見て、その後読んだよ」
「ネタバレせんといてや」
「せえへんて。面白かったよ」
「案外楽しみなんよね。……ん、マグカップは?」
「あー……うーん、好きなデザインのがなかったや」
マグカップ自体はこの施設に入っている雑貨屋や食器屋にはあった。でも私が欲しくなるようなデザインのものはなかった。
マグカップとか普段から使うものは、やっぱり気に入ったデザインのものが良い。
「それは仕方ないな……。じゃあ、あの雑貨屋行く?」
「行く! はよ行こ」
お互いに買ったものを鞄に仕舞って駐輪場へと向かう。ルンルン気分で歩き出す。
「……よく考えたら、ここ集合やなくてよかったんやない?」
後ろで蛍子がぼそっと呟いたのは聞いて、確かにそうかもと思いつつ駐輪場へと歩く。
†
自転車に跨り、また賀茂川の橋を漕ぎ抜ける。
「さっき言ってた人と会ったんはこの辺?」
「それはあっちの方。もう通り過ぎちゃったわ」
「なんや」
少し蛍子ががっかりとした声を上げる。
なんで蛍子ががっかりしてるのかはわからないが、確かにあの人たちにもう一度会いたいなとは思うぐらい面白い人たちだった。
そのまま自転車を漕ぎ、通い慣れた道を進む。
進むと普通の民家の前にたくさんの雑貨が並ぶ雑貨屋「マンジュリカ」がある。
古民家風の建物はまさしく、古民家を改装して建てられたものである。店構えと内装はおしゃれに飾り付けられていて、手作りの商品など店主の夫婦の趣味が前面に押し出されている。店内には喫茶スペースもあり、その内装や商品をゆっくりと楽しむことができる。
店の前に自転車を停めて店内に入る。
「……こんにちは~」
ゆっくりと扉を開けて挨拶をする。
「お、今日も来たね、紅莉ちゃん」
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