想いは同じ

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 数時間程その状態が続き、その間飲まず食わずの理仁を心配した坂木は理仁の横にやって来て声を掛ける。 「理仁、ほら、せめて水分くらいは摂れ。それと少し外の空気でも吸ってこい」 「……ああ、悪い。けど、とても外の空気を吸う気にはならねぇよ」 「気持ちは分かるが、お前がそんな事でどうする。彼女は頑張ってるんだ。目を覚ました時、お前がそんな死にそうな顔してたら心配するだろうが」 「……分かってるが、とにかく今は傍に居てやりてぇんだよ」 「…………血は繋がってねぇ筈なのに、お前と鬼龍の親父さんは似てるよな」 「そうか?」 「ああ、そっくりだ。あの時、親父さんも、そうして彼女にずっと付いていたしな」 「……そうだったな」  坂木の父親と鬼龍組の先代が顔馴染みだった縁で、坂木医院は極秘の手術などを請け負っている。過去に先代と恋仲だった女性が抗争に巻き込まれてしまった際も、坂木は彼女の手術を行ったのだが、残念な事に彼女は亡くなってしまった。 「俺は、あの時の義父(おやじ)の悲痛な表情が忘れられない。自分を責めていた、あの表情(かお)が今でも焼き付いている。それが原因だったんだ、俺が女を遠ざけていた理由は」 「そうだとは思っていた。けど、今は彼女の事が大切なんだろう? その気持ちを尊重するべきだ。彼女はきっと助かる。だから、希望を捨てるな。お前は顔色を良くして彼女が目を覚ますのを待ってやれ」 「……そう、だな。それじゃあ少しだけ、外の空気を吸ってくる。その間、真彩を頼む」 「ああ、任せておけ」  坂木と話をした事で少しだけ胸のつかえが取れた理仁は一旦病室を出て行った。
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