想いは同じ

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 病院には予め連絡を入れていた事もあり、着くとすぐに手術が始まった。  応急処置はしてあるものの多少時間が経ってしまっている事、出血量、撃たれた部分、パッと見ただけでも状態が良くない事が分かるのか、坂木は処置室に入る間際、『最悪の場合も想定しておいて欲しい』と理仁に告げていた。 「……真彩、何で俺なんかを庇ったりしたんだ……」  待合室にあるパイプ椅子に腰掛けた理仁は頭を抱え込んで自分を責め続けていく。 「お前にもしもの事があったら、俺は、どうすればいいんだ……」  これは、理仁の本音だった。  今まで女に興味の無かった理仁。ただそれは女が嫌いだとか、男に興味があるとかそういう事でもない。  大切な人を作ってしまうと危険な目に遭わせる確率が増える事、常に危険と隣り合わせの世界で生きる自分のせいで相手に苦労をかけたくないという思いから意識的に異性を好きになる事を避けていただけ。  そして、極めつけは鬼龍組の先代だった理仁の義父と彼が愛した女性の悲しい最期を目の当たりにしていた事が原因だった。  悲しい過去があるから、自分は生涯恋愛をする事はない、する気もないと決めていたのだけれど、真彩に出逢った事でその決意は徐々に揺らぎ始め、気付けば『生涯を共にしたい』と思える存在になっていたのだ。
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