1 まだ見ぬ私の旦那様

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 ――幼い頃、私の両親は怨霊に殺された。  家族の中で生き残ったのは私だけ。  助けられた後、遠縁の七々原(ななはら)男爵に引き取られ、一人娘の世話係となった。  お嬢様の世話係だった私に、高野宮(たかのみや)家から、結婚の申し込みが来るとは思っていなかったようで、七々原家の不興を買ってしまった。 『恩知らず』 『お嬢様を差し置いて、格上の家に嫁ぐなんて図々しい』  七々原家の人々から罵られ、すぐにでも引き取ってくれと言わんばかりに、行儀見習いとして家から追い出された。  ――私はどこにいても居場所がない。   豪華で美味しいはずの食事は味がしなかった。 「ごちそうさまでした」  女中たちは手が空いたものから順番に食事をとり、その中でも急いで食事を終わらせているのは、年若い女中たちだった。  七々原家で働いていた私には、彼女たちの大変さがわかる。  台所から出た女中部屋には、まだ終わっていない繕い物の山があり、そこに一人だけポツンと座っている女中が一人いた。 「十深子(とみこ)さん。私に繕い物を手伝わせていただけませんか?」 「奥様!」
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