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私の不安をすべて消し去った。
『今度の休みに花嫁衣裳を選びに行こう』
――花嫁。私を旦那様の花嫁だと思ってくださってる。
形だけの妻ではなかった。
それも、手紙には忙しい旦那様が時間を作り、一緒に花嫁衣裳を選んでくれるという。
小さな紙片を握りしめ、涙がこぼれた。
まるで恋文のよう。
夫婦だから、恋文と思うのもおかしな話だけど、たった一言がこんなにも嬉しいなんて思わなかった。
やっと旦那様に会える。
「よかった……」
旦那様に嫌われていなかったという安心感が、疲れた体に睡魔を呼び込む。
繕い物の途中だったのに、心地よさに負け、少しだけと思いながら横になった。
眠った私は後に後悔することになる。
まさか、私の部屋に萌華さんがやってくるなんて、少しも考えていなかったのだった――
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