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――お兄様はどうして私を妻にしてくださらなかったの!?
冬雪が嫁いでから、ずっと私の心にある言えない言葉。
私がお兄様を愛してるって知ってるくせに、妻に迎えたのは私じゃなかった。
「ひどいわ……」
ずっと憧れていた私のお兄様。
お兄様は天狐の力を持つ。
普段は黒髪と黒い瞳だけど戦神になると、銀の髪と青い瞳に変化するという。
だから、亡くなったお父様は名前を蒼也と名付けたと言っていた。
まだ見たことがないけれど、普段でもお兄様は美しい。
怨霊と戦う戦神たちは神と人間、半分ずつの性質を持って生まれ、人間離れした美しい容貌をしている。
だから、普通の人間より綺麗な人が多く、人々からの――特に女性からの人気がとてもある。
当然、お兄様に憧れる女性は星の数ほどいて、私に恋文を渡してほしいと頼んでくる女性が後を絶たなかった。
もちろん、恋文や贈り物なんて、お兄様の目に触れる前にすべて処分し、女性が近寄ってきても邪魔をして、近寄れないようにしてやった。
私の守りは完璧。
「それなのに、どこで冬雪と知り合ったの!?」
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