2 憎い義姉 ※萌華視点

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 お兄様が選んだ女性だというから、どんな美女がやってくるのかと思って身構えていたら、嫁いできたのは、七々原(ななはら)冬雪(ふゆ)という地味で暗い女だった。  それも私と同じ十六歳。  ――知り合いとは限らない。優しいお兄様のこと。怨霊に両親を殺された可哀想な娘がいると知って、同情で妻にしたのかも。 「お兄様は優しすぎるのよ」   私のお母様は元芸者で、高野宮(たかのみや)家に後妻で入った時は親戚筋からの嫌がらせが尽きなかった。  その嫌がらせから私を庇い、親切にしてくれたのはお兄様だけだった。  大切な私のお兄様――冬雪なんかに渡すものですか! 「絶対に離縁させて、この高野宮家から追い出してやるわ!」  今日一日、冬雪はお母様から散々痛めつけられていたから、今頃、部屋で泣いているはず。  追い打ちをかけてやろうと、冬雪の部屋を覗く。  フリルガラスの電気スタンドの灯りの下で、冬雪は眠っていた。   「なによ。眠ってるなら、私が来た意味がないじゃないの」  起こしてやろうかしら――そう思っていると、冬雪の手元に紙片があるのが見えた。 「手紙?」  
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