2 憎い義姉 ※萌華視点

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 私とお母様が高野宮家に入った時は、害虫か塵芥(ちりあくた)のように扱われたのに、冬雪に対しては違っていた。  憎たらしい――そう思ったら、大切なはずの提灯が呪われた品のように思え、『壊せ』と頭の中で誰かが命じた。  気づけば、私の手は提灯の吊り具に伸びていた。  吊り具から提灯を外し、地面へ叩きつける。  冬雪が灯した火は消え、真っ暗な闇が広がった。  その闇が今の私には心地いい。  暗闇の中、何度も冬雪の名が書かれた提灯を踏みつけて笑った。  提灯の和紙が泥にまみれ、中の骨が折れ、銀の吊り具が千切れる――これで、冬雪は火を灯せず、お兄様の特別ではなくなった。 「お兄様、帰ってこないで」  帰ってこなければ、お兄様は冬雪と結婚できないし、二人が仲睦まじく暮らす姿も見なくてすむ。  それだけじゃない。  お兄様が将来、私を愛する可能性も残されている。  ――ねえ、冬雪。知っている?   異界に閉じ込められた戦神は、人ではない獣の性を強め、やがて本当の獣になってしまうという。  人だった頃の記憶をすべて忘れて。 「お兄様が化け物になっても私だけは愛してあげる」
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