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嫉妬に狂い、すっかり正気を失っていた私が見落としていたこと。
『冬雪が灯した火でなければ、深い異界まで灯りが届かず、お兄様が戻れない』
その事実に蓋をした。
今はただ二人が夫婦になれず、異界と現世の隔たりに引き離され、離ればなれになったことが、とても嬉しかった。
「冬雪のことなんて、すべて忘れて私だけのものになって」
その喜びが消え、私が正気に戻るのは、夜が明けた後のことだった。
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