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「嘘をおっしゃい! 私と萌華は、仕事を怠けていたのを注意しただけ。屋敷の者たちも叱られていたのは知っているけど、提灯の火は見てなかったと言ってるわ」
「そんなはずありません……! たしかに私は火を灯しました!」
私がろうそくに火を灯し、提灯を玄関に飾る様子をお義母様と萌華さんは見ている。
玄関の門が提灯の火に照らされていたことは、住み込みの使用人ではわからないかもしれないけど、通いの使用人たちなら証言できる。
提灯の火が灯されていたと、誰かが証言してくれるはずだと信じていた。
けれど、全員、気まずそうに目をそらし、私をかばう人は誰一人としていなかった。
「なんてことをしてくれたんだ。高野宮家はおしまいだ」
「お前のせいだ!」
「提灯の灯りひとつ、寝ずに見張れないのか!」
高野宮の親族たちが私を怒鳴りつけた。
「冬雪は私より早く眠っていたわ」
萌華さんが言うと、ますます私への憎悪は膨み、殴られるのではないかと思った。
怯える私をお義母様が笑う。
「旦那様が帰るまで起きていないなんて、本当に駄目な嫁だこと。萌華は眠らずに待っていたのよ」
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