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「お兄様が心配だったから、私は眠らずに待っていたの。それなのに、まさか提灯が壊されていたなんて……!」
萌華さんが涙をこぼし、着物の袖で顔を隠した。
「お兄様は冬雪のせいで行方不明になったのよ!」
ショックのあまり萌華さんは床に崩れ落ち、大きな声で泣き出した。
――旦那様が行方不明。
私の手は無意識に、胸元の手紙に触れていた。
『今度の休みに花嫁衣裳を選びに行こう』
私と旦那様が初めて交わした約束は、このまま果たされることなく終わってしまうのだろうか。
ようやく会えると喜んでいた気持ちが、たった一晩で終わるなんて――
「旦那様と会えないなんて嫌です……」
自分の声が震えているのがわかる。
誰でもいいから、旦那様が帰ってくると言ってほしい。
なぜ、私の提灯が消えただけで、旦那様が行方不明になったのか教えてくれる人は誰もいなかった。
それでも、私はわからないなりに必死に食らいついた。
「旦那様はどちらで行方知れずになったのですか!? 私、探します。探しますから、教えていただけませんか!?」
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