3 戻らない旦那様

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「火が消えただけじゃねぇだろ? これは明らかに人為的に壊されたものだ」 「これは捜査するべき案件かと思います」  大佐と呼ばれた長い黒髪の男性は、部下たちを煩わしそうな顔で一瞥(いちべつ)し、面倒だと言わんばかりに手を振った。 「我々の仕事は怨霊と戦うことが第一優先。器物破損を調べるのは警察の役目だ」 「大佐。壊された提灯の修理は?」  色素の薄い茶色の髪と瞳をした男性が、背を向けた大佐を呼び止めた。 「あれだけ壊れたら修理は不可能。高野宮の捜索を優先する」 「……了解」  不服そうな顔をしていたけれど、上官には逆らえないようで渋々了承する。 「現世(うつしよ)のことは現世の者に任せる。異界で動けるのは我々のみだ。行くぞ」  他の戦神たちに有無を言わさず、彼らは急ぎ去っていった。  捜索を優先すると言っていたけれど、旦那様は見つかるのだろうか。  焦っているのは誰の目にも明らかで、旦那様が行方不明になったことが軍にとって大きな痛手であることがわかった。 「火守りの提灯はいったい誰に破壊されたんだろうな」 「仕事が嫌で怠けたい冬雪がやったのでしょう」
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