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「違います! 私はそんなことしません!」
否定しても、私の声は無視されて、まるでいない者のように扱われた。
すでに私は『高野宮の人間ではない』――そう言われているかのようだった。
提灯を破壊した犯人を捜す気はみじんもなく、私に罪をなすりつけて終わらせるつもりだ。
「千年に一度の逸材と言われた蒼也様がいなくなるとはな」
「死ねば次の天狐が高野宮の一族に現れるだろうが、行方不明では、いつ次の天狐が現れるかわからん」
「異界ではどれくらい生きられるものなのだ? 怨霊と戦い、死んでくれた方がマシだったな」
――なにを言ってるの?
自分の耳を疑った。
高野宮の親族は戻らない旦那様に対し、ひどいことを平気で口にする。
「高野宮家を存続させるために、なにか方法はないか?」
それを聞いたお義母様は分家の人々に提案する。
「高野宮の血を引く分家から、萌華に夫を迎えてはどうかしら?」
「ふむ。数年後、天狐が生まれるかもしれんな」
「蒼也さんが死んでいればね」
お義母様は悲しむどころか、旦那様に代わる次の当主を自分の娘に産ませようとしていた。
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