3 戻らない旦那様

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「違います! 私はそんなことしません!」  否定しても、私の声は無視されて、まるでいない者のように扱われた。  すでに私は『高野宮の人間ではない』――そう言われているかのようだった。  提灯を破壊した犯人を捜す気はみじんもなく、私に罪をなすりつけて終わらせるつもりだ。 「千年に一度の逸材と言われた蒼也様がいなくなるとはな」 「死ねば次の天狐(あまぎつね)が高野宮の一族に現れるだろうが、行方不明では、いつ次の天狐が現れるかわからん」 「異界ではどれくらい生きられるものなのだ? 怨霊と戦い、死んでくれた方がマシだったな」  ――なにを言ってるの?  自分の耳を疑った。  高野宮の親族は戻らない旦那様に対し、ひどいことを平気で口にする。 「高野宮家を存続させるために、なにか方法はないか?」  それを聞いたお義母様は分家の人々に提案する。 「高野宮の血を引く分家から、萌華に夫を迎えてはどうかしら?」 「ふむ。数年後、天狐が生まれるかもしれんな」 「蒼也さんが死んでいればね」  お義母様は悲しむどころか、旦那様に代わる次の当主を自分の娘に産ませようとしていた。
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