4 離縁された妻の決意

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 何人もの軍服を着た人たちが次々と暗闇から現れ、私の周りを囲んだ。  気づけば、逃げたくても逃げられない状況になってしまった。 「ああ、そうか。どこかで見たことあると思ったら、蒼也(そうや)の妻だ」  ――まさか、高野宮にいた戦神!?  あっさり私の正体を暴いて、すっきりした顔をした。 「柊木(ひいらぎ)少尉。今、高野宮って……」 「まさか、彼女が高野宮大尉の火守(ひも)り姫ですか!?」 「そうだよ」  柊木少尉と呼ばれた茶色の髪の人は、騒ぐ年下の戦神たちにうなずく。  今日の朝の騒ぎを考えたら、旦那様のことを知らない人はいないと思う。  私を見る視線が痛く、場が騒然となる。  前を阻まれ、この場から去ることも叶わず、戦神たちから罵られることを覚悟し、着物の袖をぎゅっと握りしめた。 「こらっ! シロ、駄目でしょ! なにをいじめてるのっ!」 「え? シロ?」  シロという犬がいるのかと思って、つい探してしまったけれど、犬はどこにもいなかった。 「いじめてない……」  ご主人様に叱られた犬のようにシュンとしてうなだれた。
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