4 離縁された妻の決意

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 志郎さんの話を聞いて、幾久子さんはあまりにひどいと憤慨(ふんがい)した。 「いつか戻ってくるかもしれないじゃない! いくら戦神の特例とはいえ、妻に了承もなく、婚家が勝手に離縁していいと思ってるの!?」 「異界で行方不明になった戦神が現世(うつしよ)へ戻ってこれた例はない。気持ちに踏ん切りがつかない残された人々のための特例だよ」 「でも、可能性はあるでしょ?」 「そうだね。米粒くらい……砂粒?」    幾久子さんは顔を赤くして、志郎さんに怒鳴った。 「志郎の馬鹿!」 「俺に怒っても。戻らない戦神の婚約者や夫を待ち続け、死ぬまで婚家に縛りつけられるよりいいと思うけど」  戦神が異界から戻らなかったり、怨霊との戦いの中で亡くなる可能性を考え、特別な法律があるということらしい。  だから、旦那様が行方不明になったと軍が認めたなら離縁できる――私が望まなくても。   「あ、あのね、志郎は悪気があって言ってるんじゃないの。ただ嘘がつけないだけなのよ」 「いいえ……。私にいろいろ教えてくださり、ありがとうございました」
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