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申し訳なさそうに言った幾久子さんは言ったけれど、私は志郎さんの言葉に傷ついたわけではなかった。
――なにもわかっていなかった自分が情けないだけ。
「志郎がごめんなさいね」
「志郎さんは悪くありません。わからない私に説明してくれているだけなんです」
幾久子さんは私が高野宮家の嫁だから、火守り姫としての知識をすでに持っていると思っている。
でも、志郎さんは高野宮家で、私と一度会っていた。
だから、私がなにも知らない無知な火守り姫であるとわかっているのだ。
「幾久子さん。私はどうして提灯に火を灯すのかさえ知らない火守り姫なんです」
言っていて自分自身が情けなく、泣き出しそうになる。
私が火守り姫や戦神、異界のことに詳しかったら、旦那様が行方不明になることもなかった。
お義母様に高野宮家を奪われることも――
「志郎さん。私に異界や火守り姫のことを教えてくださいませんか?」
「教えるのはいいけど、異界で蒼也を探すのは無理だよ。俺たちでさえ、見つけられないし、普通の人間は長く異界にいられない」
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