5 火守りの姫

7/9
前へ
/72ページ
次へ
 それは、美しく強い戦神であっても同じ――私と同じだった。   「君の壊された提灯だけど新しく作り直すことになる。火守り姫の提灯は和紙、金具、ろうそく……ひとつひとつが特別な素材を使用している。早くて五年はかかる。それでも、君は蒼也を待つ?」 「待ちます」  私の気持ちは決まっていたから、迷うことなく返事をした。 「五年後、蒼也が人間でなくなっているかもしれないけど、それでも?」 「異界の暗闇に来て、なおさら私は旦那様を待たなくてはいけないと思いました。旦那様は私が灯す火を待っていると思うんです」 「異界と現世では時間の流れが違う。ここのほうが時間の流れが遅いんだ」  ――志郎さんは私が心変わりするのを心配している。  何年後になるかわからないけれど、新しい提灯が完成すれば、私はふたたび火守り姫として、火を灯せるようになる。  私の火があれば、旦那様が戻ってこれるかもしれない。 「志郎さん。五年後、十年後……いいえ、私がおばあさんになって、姫と呼ばれるような年齢でなくなっても、旦那様が戻るために火を灯します」  志郎さんは私の言葉に微笑んだ。
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!

850人が本棚に入れています
本棚に追加