6 戦神たちの仮宿『扇屋』

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「シロ! もっと反省しなさい!」 「反省してる」  廊下からお説教する声が聞こえ、目が覚めた。  ぼうっとしながら、布団から起き上がり、襖戸を開けると、そこには廊下に正座させられた志郎(しろう)さんと仁王立ちの幾久子(いくこ)さんがいた。  ――いったいなにが!?  志郎さんは眠そうな顔で私を見た。 「もう昼だけど、おはよう」 「冬雪(ふゆ)ちゃん。体の具合はどう? 昨晩、異界に行って倒れたのよ」  ――そうだった。  昨晩、志郎さんとともに異界へ渡り、立っていられないくらいの疲労感に襲われ、倒れてしまった。  けれど、後悔はしていない。  異界から見た火守り姫が灯す火はとても美しかった。  志郎さんの言葉を思い出す。 『俺たち戦神(いくさがみ)にとって、あの灯りは家の灯りなんだ』  提灯に灯された火は時間の流れが違う異界から、戦神たちに帰る時間を教え、道を示すためのものだった。  異界からの出口である提灯は大切なもの。  そして、ここ扇屋(おうぎや)は戦神とその候補生たちの下宿屋であることを知った。   「幾久子さん……」
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